グレアン伯爵邸は、ごくごく典型的な貴族の邸宅だ。玄関ホールには二階に通じる大階段がある。
「このお方は……?」
その踊り場に巨大な肖像画が飾られていた。やや古めかしい衣装と整った口髭が印象的な男性の肖像画だ。
「今日より、君のご先祖となるお方さ、アンナ。グレアン家23代目当主、ヨヴァナ2世公だ」
「ヨヴァナ2世様? というと帝国宰相を務められた?」
「ほう。君は我が家門の誇りともいうべき方を知っているのか!?」
「ここに来る前に勉強しておりましたから」
この前もこんなやりとりをしたな、とアンナは思った。
男という生き物は、年端もいかぬ少女が、自分が誇りとしている事柄を知っていると、とても嬉しくなるらしい。
べルーサ宮の文化人たちにとってはそれが自分の作品であり、この伯爵にとっては輝けるご先祖様、というわけだ。
* * *
「このお方は……?」
その踊り場に巨大な肖像画が飾られていた。やや古めかしい衣装と整った口髭が印象的な男性の肖像画だ。
「今日より、君のご先祖となるお方さ、アンナ。グレアン家23代目当主、ヨヴァナ2世公だ」
「ヨヴァナ2世様? というと帝国宰相を務められた?」
「ほう。君は我が家門の誇りともいうべき方を知っているのか!?」
「ここに来る前に勉強しておりましたから」
この前もこんなやりとりをしたな、とアンナは思った。
男という生き物は、年端もいかぬ少女が、自分が誇りとしている事柄を知っていると、とても嬉しくなるらしい。
べルーサ宮の文化人たちにとってはそれが自分の作品であり、この伯爵にとっては輝けるご先祖様、というわけだ。
* * *