「……やっぱり残っていた」

 崖の上、伯爵の小屋も見るも無惨な黒焦げの山と化していた。炭化した柱や屋根を払いのけ、タフトはそこにあるべきものを見つけ出す。大人ひとりが入れる程度の穴を塞ぐ蓋。地下室の入り口だ。

「この蓋、耐火性って言ってたもんな」

 普段開けっぱなしにしているそれが、閉じられている。きっと兵士の存在に気づいた"伯爵"が、寸前に閉めたのだろう。
 蓋の表側は床材と同じ材質を完全を用い、完全に一体化して見える、それが蓋だと前もって知らされていなければ見逃してしまうだろう。

 中に降りると、そこはいつも通りの少しかび臭い研究室のままだった。
 "伯爵"は、研究の殆どをこの地下室で行っていた。そして、その内容をノートに書き残している。その多くをタフトは読むことができたが、その中に絶対に見せてくれないものがあった。

「確か、この机の中に……」

 机の引き出しに手をかけるが、動かない。鍵がかけられている。

「ごめんよ、"伯爵"」

 すでにこの世にいない机の持ち主に謝ると、タフトは実験器具を固定させるための鉄の重しで、思いっきり机を叩いた。何度か繰り返すと引き出しにヒビが入り、バキンと音を立てて、鍵の周りが砕け散る。
 タフトは重りを放って、引き出しの中身を取り出した。
 黒革で装丁された分厚いノート。同じものが5冊ほどある。これに間違いない。

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