午後 3:20 ボールロワ元帥率いる2万3000の軍勢により、ヴィスタネージュ大宮殿の本殿、西苑、南苑、および各省庁の制圧が完了。一部でクロイス家の私兵による抵抗があったが、全て鎮圧された。
 その報告を聞いた女帝マリアン=ルーヌは、征竜騎士団ダ・フォーリス隊に護衛されながら、本殿へと移動した。

「陛下、事前の準備が不十分であったため、ここまで事態が混乱したことをお許しください」

 グラン・テラスに現れた女帝の前で、元帥はひざまずいた。

「よい。クロイスの暴走は、あなた方にも予想外のことだったはずです。これほどの騒ぎとなり、宮殿内の複数箇所で火災が発生した以上、責を問わぬ訳にはいきませんが、最小限に処分に収めることをお約束します」
「ご温情、まことにありがたく存じます……」
「ところで……ダ・フォーリス大尉はまだ見つからないのかしら?」
「は? 大尉は、陛下とご一緒であると聞いていますが?」
「グリージュス夫人を探すために村里を出て行ったきり、戻りません。近衛隊全部隊の東苑と北苑への立ち入りを許可します。なんとしても探してください」
「ははっ!」

 女帝はそれだけ言うと、同行していた貴族たちとともに白百合の間へと向かった。

「はて……」

 ボールロワ元帥は眉をひそめる。その中にいるはずと思っていた顧問の姿が見えない。しかし、そのことに女帝はなんの言及もしなかった。

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