琴ちゃんの席に集まって、琴ちゃんの返されたテストで間違った部分を説明すると、わかった瞬間に顔をぱあっと明るくしてくれる。

教える側としては嬉しい反応だなあ。

凛ちゃんの得意科目は歴史で、特に世界史は抜群。

私の問いかけに凛ちゃんが先に答えると、琴ちゃんは悔しそうな顔をする。

……すごく、あったかい時間。

実を言うと私、晃くんのことがなくても、友達を作るのがすごく苦手だった。

私の家庭はちょっと変わった家庭に分類される方で、私は父親というものを知らない。

存在はしているらしいけど、会ったことはないし、会いたいとも思わない。

田舎と都会の混じったこの街でなくても、そういう家庭環境の話を尾ひれがついて飛んでしまう。

私は奇異の目で見られていて、小学生の頃友達になりたいと思ってクラスの子に近づいても、うまくいったことがなかった。

一人だけ、小学生の頃、それこそライバルのような関係で、成績を競っている子はいたけど。

向こうの家庭の事情で四年生の頃に転校して、それっきりになってしまった。

巽は保育園からずっと一緒だけど、友達という感覚はあまりない。

今は解消されているけれど、うちと藤沢の家は因縁のある家同士だったから、話すことがあれば話すクラスメイトって感じだった。

小学校や中学校では同学年に複数のクラスがあったけど、巽とは全クラス一緒で、いつの間にかお互いを『幼馴染』って言うような関係になっていた。

私には今、大好きな友達が二人もいる。

巽っていう幼馴染と、晃くんっていう仲良しもいる。

たぶん、今まで生きて来た中の、つらいことのどれひとつだって、今の幸せに繋がるために必要なことだったんだ。

……そう思える今に感謝する気持ちと、そう思わないと過去の自分を救ってあげられない気持ちとがあって、ちょっと複雑だけど。

どちらにしろ、家に帰れば仲良しの晃くんにも会えるんだ。

だから、学校でお話出来なくても気にしなくていいかな。

……とか思っていたら、やらかした。お昼休み、お弁当箱をあける二秒前に気づいた。

晃くんに渡したのと、私が持っているお弁当、中身が全部一緒だ……! ついでに言うと盛り付けも一緒だ……! 朝の、お弁当を作っている自分の映像が頭に浮かんでいた。

いつも教室を離れて、凛ちゃんと琴ちゃんと三人で中庭で食べるから、気づかれる可能性は低いだろうけど……でも、通りすがりの人に見られるという不安もある……。

「咲雪ちゃん? どうしたの? 顔色悪いよ?」

琴ちゃんに言われて、はっと顔をあげる。

……ここで、二人に晃くんとの同居を話してしまうことも出来る。普段は仲いいんだよ、って。

……でも、もしまた……

「咲雪ちゃ――
「司。ちょっといいか」