「あ、お母さんからだ」
お夕飯もお風呂も終えたリビングで、私は参考書とにらめっこ、晃くんはノートパソコンでお母さんたちの会社のバイトをしているとき。
私がソファで寝落ちして転げ落ちかけるという失態してから、寝る前のこの時間、私たちはソファに背中合わせで座るようになった。
あの日の翌日、なんとなく私が横向きに座っていたら、晃くんが背中合わせに座ってきたのがきっかけ、かな。
晃くんの顔は見えないから、ドキドキするけど勉強に集中出来ないなんてことはなくて、むしろ背中伝いに感じる晃くんの体温と心音は、私をとても落ち着かせてくれた。ドキドキするけどね? 晃くんにはヒミツだけどね?
「なんて?」
背中越しに晃くんが訊いて来る。
「お母さんと奏子さん、来週一度帰ってくるって。またすぐ戻るって書いてあるけど。晃くんの方には来てない?」
「ん、ちょっと待って」
と、晃くんがソファの前のローテーブルに置いてある自分のスマホを取った。
「……母さんからだ。気付かなかった」
そですか。
「あとで怒られるよ? なんて書いてある?」
「同じ内容。一時帰国。またすぐ向こうに戻るって」
ふーむ、忙しいなあ。でも一緒に帰ってくるなら、奏子さんもここに泊まっていくかな? ごはん何にしようかなー。
「二人揃って帰ってくるってどうしたんだろうね? お仕事終わったわけじゃなさそうだし」
「なんだろな。平日に帰ってくるから、迎えはいいって」
じゃあ私たちが学校に行っている間に帰ってくる予定なのかな。それなら何時に帰ってくるかわからないし……。
「その日、朝にご飯作って置いておいた方がいいかな? 家に直帰するかもしれないし」
「そうしとくか」
「………」
ぽすん、と晃くんの背中に寄りかかった。
「さゆ?」
「うん。いや、なんか急に来ちゃって」