……翌、朝のホームルームが始まる前、隣からやたら視線を感じる。
「……なに、青山」
「いやー、晃くんってほんとキレイな顔してるよねーって思って」
「……それ、最悪」
俺は、自分のツラと声ほど嫌いなものはない。
「あ、そうなの? ごめん、不躾に」
あ、引くんだ? 深くツッコんで来なかったところは好印象だ。ツラと声は俺の地雷だから。
「晃くんてさ、さゆと一位争いしてるんだって?」
「……別に、そんなんじゃない。周りがそう言ってるだけ」
「そうなの? でも付き合ってるんでしょ?」
さゆ、青山には話してないのか。本当に付き合っているわけじゃないって。
昨日、俺をさゆの彼氏だと名指しした三人はそれを知っているんだけど。……もしかして青山っていじられるタイプなのか?
「………」
「答えナシ、か……。駄目だなあ。ちゃんとさゆのこと好きだって断言してくれる奴じゃないと、俺の大事なさゆはあげらんないなあ」
「……は? お前、何言って――」
「言った通りだけど? さゆは俺の大事な子。だから、晃くんにはあげない」
……は?
「さゆはモノじゃねえ。お前にそんなこと言われる筋合いもない」
思わず青山を睨みつけると、青山は怒るどころか満足そうな顔をした。
「やっとこっち見たね」
「……は?」
「晃くん、ずっと俺から視線外してるから、なんか悪いことしちゃったかな~って不安だったんだよ。もしかして、小学生の頃にさゆとライバルだったとか、晃くんには嫌な話だった?」
「………」
お前がさゆの初恋だって知って更にイライラが増しただけだ。……とは、言わないけど。
「さっきの言い方。お前がさゆの彼氏みたいに聞こえてイラッとした」
「あ、あ~ごめん。あれは彼氏って言うよりはむしろ――」