いつの間にそんなことになってるの⁉ 第一、私が一位になれたことなんてないよ。私は万年二位だから。

「……そうなのか?」

ダウナー晃くん、登場。死んだ魚の目になっているよ、晃くん。すごく面倒くさそう……。

私と晃くんの仲をワケ知りな巽は、くすくす笑いをかみ殺している。

「カオ良くて頭よくて運動神経よくてって、お前どんだけ持ってんだよ」

晃くんと巽に寄って行った男子たちに、一瞬思うことがあってしまった。

けど、交流がない体(てい)を貫かなくちゃ。晃くんや巽にまた心配させちゃう。

「んで⁉ 司からは一言ないの? 次は勝つ! とか」

「え? えーと……」

急に話を振られてびっくりしていると、晃くんがそう言って来た男子の頭を軽く小突いた。

「だから、前から言ってるけど司とは争ってるわけじゃねえから。可哀想だろ、巻き込むなよ」

司。人前で晃くんは、私を苗字で呼ぶ。同じように私も「雪村くん」って呼ぶように心がけている。

……なんか他人行儀で、違和感しかないんだけど。

「えー。こんだけ一位二位独占しといてそんな感じなの? もっとこう、ライバル視するとこないの?」

「ねーよ」

一刀両断した晃くんにまだ不満げな顔をする男子もいるけど、私は少しほっとしていた。

ちらちら女子から向く視線がね、ちょっとよろしくない感じのもあったから。

晃くんから否定してくれたから、そんなにいちゃもんつけられないと思うけど……お礼お夕飯がんばろ。

「咲雪ちゃん、お願いあるんだけど、いいかな?」

琴ちゃんが可愛い声でそんなことを言って来た。断わるわけがない。

「なに?」

「琴、下から数えた方が早い順位だったの……。ちょっと勉強教えてほしいんだけど……今から少しだけいいかな?」

「うん。どの教科?」

琴ちゃんに先導される形で、凛ちゃんも一緒に教室に戻る。

ライバルネタで晃くんに迷惑をかけなかったことに、内心ほっと息をつきながら。