「あっ、う、うん!」

慌てて身体を起こそうとすると晃くんに押し止められて、また膝枕状態に戻ってしまった。

「晃くん? なんでこんな格好に?」

「さゆが俺の背中で寝落ちして、ソファから転げ落ちそうになったから避難先としてこんな感じに」

………まじか。

「そ、それは大変ご迷惑を……」

「いーよ。少しは眠れた? さゆ、いつも遅くまで勉強してるだろ」

「それは晃くんもじゃん。会社の手伝いとか」

「やりたくてやってることだから。晩飯、出来てるから食べるか?」

「うん」

今度はゆっくり起き上がって、ササっと服を整える。

また迷惑をかけてしまった……。

「さゆ、青山のこと好き?」

「ぶはっ」

お夕飯ももう盛るだけでよかったから、準備して向かい合って座った途端、晃くんからそんなことを訊かれた。

「旭? えーと、好きだった、かな? 小学生当時の、過去形ってやつ?」

私が今好きなのは晃くんだから、――あれ? そう言えば私、いつから晃くんが好きなんだろう? 旭のことも、何年も経った今、好きだったって気づいたくらいだから、もしかしたら結構前から好きだったのかも……。

「過去形?」

「うん。今の旭は、比べるなら巽と同じ感じかな。仲のいい男友達」

「……ふーん」

晃くんから深く突っ込まれることはなかったけど、何やら含みのある返事。

「晃くんにとっての琴ちゃんみたいな感じ?」

シチューをスプーンに乗せた晃くんがぴしゃりと固まった。

「……だとしたらさゆ、青山にすごい勢いで嫌われてることになるぞ?」

「え、琴ちゃんって晃くんのこと嫌いなの?」

「……どう見ても敵視しかされてないだろ、あれ」

言われて、日ごろの琴ちゃんを思い出してみた。うーん……?

「琴ちゃん、巽の傍だと大人しくて、晃くん相手だとよく喋るから、晃くんの方と仲いいと思ってた……」