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「やー、旭が同じ学校になるなんてびっくりだったよー」
帰ってから、いつものように並んでキッチンに立つ。
今日はクリームシチュー。さゆは今日ずっとご機嫌だ。俺の不機嫌も知らずに。
「仲いいんだな」
……少し嫌味っぽい口調になった気もするけど、さゆは全然気づいていないようだった。
「まー昔馴染みって奴だからねー。最初のライバルだし」
……やっぱ、さゆもそういう認識なんだ。
「でも、今は晃くんがいるから」
「………」
え?
「晃くんがライバルだから、今すっごい楽しいんだ。おまけに? 一緒に暮らしててとっても幸せだし」
「―――」
……そ、そういう可愛いことを言うな……。
「晃くん?」
黙り込んだ俺を不審に思ったか、さゆが顔を覗き込んでこようとした。慌てて更に顔を背ける。
「……晃くん?」
「あんまり」
「ん?」
「……そういうこと、言わないで」
「あ、ごめん……」
――しまった。さゆの声のトーンが落ちた。
自分の失態に気づいて、慌ててさゆの方を見た。
「さゆ、今のは否定じゃなくて――」
「ん?」
見上げて来たさゆの目元が潤んでいるのが見えて、さっきまでの嫉妬が全部すっ飛んだ。
泣かせないって、傷つけないって言ったのに。
「――俺も幸せだから!」
「……へ?」
「その、なりゆき? だけどさゆと一緒にいられて、俺も幸せだから。だから、今のは照れ隠しって言うか恥ずかしくて――」