「複雑みたいだね。ってか、よく咲雪と藤沢がいる学校に転校になったよね」

相馬が腕を組みながら言う。

「あ、それは仕組みました」

……は? またも青山から意味不明な言葉が飛び出した。

「母さんが結婚して母校の小学校が近いこっちに来ることになったんだけど、どうせだったらさゆと同じ学校がいいなーって思って、巽に訊いたんだ。そしたら巽も同じ学校だって言うから、これはここしかないなって」

……さゆを狙ってここへ来たってこと? ちょ、ふざけんな――。

「青山、言っとくけど咲雪、彼氏いるからね?」

「えーと、相馬さんだっけ? 青山じゃなくて――」

「別にいいじゃん。新しい苗字にも早く慣れた方がいいっしょ?」

相馬フリーダム。こいつに抗うだけ無駄だとは俺もよく知っている。

青山は困った顔になった。

「うん、まあそうかな。で、さゆに彼氏いるって話だっけ?」

「そう、さっきから一言も喋らないこいつ」

と、巽と琴と相馬、三人が俺を指さして来た。

青山は俺をじーっと見た後、さゆを見上げた。

「さゆにこんなイケメンの彼氏……。さゆ、惚れ薬でも盛ったの?」

「さすがにひどくない⁉」

さゆが大きく反発した。どういう意味だ青山。

「そうだね、惚れ薬を盛るんならむしろ雪村くんがやりそうなことだし……」

琴もひでえよ。

けど、そんくらいしないとさゆは俺を見ないような気もする……。

「えーっと?」

「……雪村晃」

「晃くん。さゆ繋がりでよろしくー」

笑顔で一方的に手を取られ、握手した形でぶんぶん振られた。

……晃くんて呼ぶな。腹立つ。