さゆが俺の『彼女』になってから一週間。

今のところさゆに嫌がらせもないし、俺が告白されることも、さゆに言い寄る奴もいなくなった。

俺は正真正銘さゆを好きなわけだから、さゆの優しいところを利用しているわけだけど……。

まあ、恋愛偏差値を放棄しているさゆだから、ぶっちゃけまだ手も繋いでません。

ただ、学校でも『さゆ』って呼んで、一緒にいるようになっただけ。

それだけでも、巽や琴に呆れられるくらい俺は機嫌がいいらしい。

「おにーさん、にやけてますよー」

「うん、自覚ある」

「あんのかい」

「咲雪ちゃん見てにやけるのやめてよね? まだ琴と凛ちゃんの咲雪ちゃんなんだから」

巽と琴からは厳しめの発言。

さゆ、俺と一緒に住んでいることを琴と相馬に黙っていて、二人に相当拗ねられたらしい。

詫びに、これからは全部報告すると約束させられたそうだ。

だから、俺とさゆが本当に付き合っているわけではないと知っている。

そうしたら俺も巽に言わないのはなんか落ち着かなくて、男友達では巽だけには話してある。

その関係もあってか、この五人でいることが多くなった。

「あ、雪村」

今朝は、朝練のなかった巽も一緒に登校していた。

廊下を歩いていると、俺たちの担任の教師に呼び止められた。なんで俺だけ?

「なんですか?」

「あ、みんなもちょうどよかった。今日転校生がいてさ。うちのクラスに入るから、まあよろしくってことを言って置きたくて」

……んで、なんで俺? 心の声が顔に出ていたのか、担任は続けた。

「その生徒が編入試験満点クリアだったから、雪村や司の新たなライバルになるかなーとな」

「はあ」

……俺のライバルとか、さゆだけで十分すぎだし。

なんとなくイライラを引きずりながら、教室へ向かった。

……ああ、独占欲ってこういうときに出るんだ。

さゆは俺のじゃないのに、さゆのライバルって言われるのは俺だけでいいって思ってしまった。ガキくせー。