げはげは、と思いっきり咳込んでしまった。な、なんてこと言うんだ!
「ほらな。単語一つでそこまで動揺するさゆに、付き合ってるっぽいことなんて出来るわけないだろ」
晃くんは呆れたように糸目になっている。
「じゃあ私はなんのために晃くんの彼女になるわけ⁉」
「………」
「? 晃くん?」
「………なんでもない。俺とさゆ、元々近い距離に見られてるんだから、休み時間とか一緒に過ごす程度でいいと思うよ。今日、さゆが俺の席まで来てくれたみたいに」
晃くんはこともなげにそう言った。
「あ、そういう……びっくりしたー」
本気でびっくりしたよ。晃くんからそんな単語が出て来るなんて……。
「さゆの恋愛偏差値の低さはよく知ってるから」
……笑いをかみ殺しながら言われた。
「……悪かったね」
思わずぶすくれた声が出た。態度が悪いと思いつつ、不機嫌な顔はどうにもできなかった。
「可愛いと思うよ?」
「……晃くん、どっかで頭打って来た?」
昼間っから挙動がおかしいよ? それか変なもの食べた?
「さゆが言う『付き合ってるっぽいこと』をしてみようかと思ったんだけど……」
「ごめんなさい。撤回します。晃くんの言う『付き合ってるっぽいこと』がいいです」
休み時間とかを一緒に過ごすくらいなら、一日中一緒に過ごしている今とそう変わんないから私のメンタルへの負担も少ないはずだと即座に撤回を示した。晃くんに一票。
「……本気なんだけどね」
「晃くん? さっきからなんかブツブツ言ってない?」
小声ではっきりとは聞こえないんだけど、何か言っている……。
「うん、さゆには聞かれたくない話を」
「……なんでそういうことを本人の目の前で小声で言う?」
「なんでだろーなー。取りあえずメシ作んない? 腹減った」
「あ、うん」
どういう意味か経過か、よくわからなかったけど。
晃くんと付き合うことになりました……?



