それに晃くんは、自分は絶対的に人を好きなっちゃいけないって思ってる。
……こればかりは、私にもどうも出来ない……。
テーブルの上で手を組んでそこへ視線を落とす。
「……大事って思ってくれるのは正直嬉しいよ。でも、晃くんを傷つけてまで護ってほしくはない」
……同じとき、晃くん言ってた。
自分は父親にそっくりの容姿と声をしている。
だから、いつか自分がああなりそうで怖い、って……。
好きな人が出来て一緒にいるようになっても、その人のことを大事に出来ない自分に、傷つける自分にならないって言いきれない。
だから、好きな人も作らないし、付き合ったりもすることはないんだ、って……。
私がどれほど、晃くんは優しくて周りの人を大事にしているか知っているから大丈夫だよって言っても、それは晃くんには届かなかった。
晃くんは好きな人が出来ても、好きな人のために、その人のことを諦めてしまうんじゃないだろうか……。
私は、晃くんに護られてばかりだ。
だからせめて、晃くんの負担になりたくない……。
「わかった。じゃあさゆ、俺を助けると思って、俺と付き合ってることにして?」
「へ? なんでそうなるの?」
意外な言葉に顔があがる。
真正面の晃くんは、真面目な顔で話し出した。
「正直、告白を断るのって神経使う。俺はなんとも思ってなくても、向こうは好意を持ってくれてるわけだから、無下にするばかりは失礼だと思ってる。でも、好きな人でもないから付き合うなんてことも考えらんない。だから、好きな子と付き合ってるから断る、って言えば相手も納得してくれるだろうし、俺も心苦しくない。そういう意味で俺を助けてくれない?」
「………」
晃くんを、私が助ける……? 事実、晃くんが私を好きなわけじゃないから、相手の方に完全に誠意を貫いているとは言い難いかもしれない。
でも、それが私に出来るなら……。
「うん。そういうことなら、私で晃くんの力になれるなら、請け負う」
晃くんを好きな人たち、ごめんなさい。
晃くんと、晃くんを好きな人たちを天秤にかけたら、あっさり晃くんの方に傾いてしまった。
晃くんのために私が出来ることがあるのなら、私は役目を果たしたいと思った。
「……護られてばかりだな」
「? 晃くん?」
「なんでもない。そういうわけだけど、今までと変えることとかなくていいから」
「そうなの? 付き合ってるっぽいこととかした方がいいんじゃないの?」
「キスしたり?」
「ぶはっ!」