「新入生代表挨拶憶えてないのか?」
琴ちゃんを挟んで私の反対隣にいる凛ちゃんが、琴ちゃんを見ながら首を傾げた。
入学式の挨拶は首席が行うのが通例。今年度は晃くんだった。
晃くんのことだから壇上に立っただけでざわつきが起こったっけ。
「友達が出来るか不安で雪村くんどころじゃなかった」
「……琴って割とドライだよな」
「大事だよ、友達。琴、ぼっち覚悟だったから、咲雪ちゃんが声をかけてくれたときは天使が降臨したと思ったからね!」
「大袈裟だよ」
入学して少し経った頃。
琴ちゃんとはクラスが一緒だったけど、友達が凛ちゃん以外いなかった私は、どう琴ちゃんに話しかければいいからわからないでいた。
でも、凛ちゃんに「三科さんに話しかけたい」って相談したら、凛ちゃんは背中を押してくれた。
それで私は自分から琴ちゃんに歩み寄ることが出来たんだ。
そんな、今では友達になれた琴ちゃんが横から抱き付いてきた。
「大袈裟じゃないよっ。こんな優しくて凛々しくて可愛くて頭もいいなんて、琴が男だったら絶対告白してなんとしても付き合ってるからねっ」
「じゃああたしも告白するか。咲雪に」
「なんで友達三人でドロドロするの」
しかも全員女子なのに。思わず笑ってしまうと、つられたように凛ちゃんと琴ちゃんも笑顔になった。
――ざわっと空気が変わった。
廊下にいたみんなの視線が一気に集まるような感覚。
廊下の向こう側に、朝練終わりの巽と一緒に歩いてきた晃くんが注目を集めているんだ。
晃くんは巽が親友っていうのがみんなの認識だけど、男子全般とも仲が良くてみんなと話したりしながら教室まで来ているみたい。
ただ、その対応をするのは男子だけで、女子はちょっと避けている模様……。
女嫌いとかではないんだけどね。
そして晃くんの評判は言わずもがな。更に巽も――保育園から一緒だからイマイチ感覚ないけど、百八十六センチの長身で、見た目も爽やかイケメンらしい。
そんな二人がいつもつるんでいるから衆目を集めるみたいだ。
「晃―! すごいよお前! 一位!」
「え? ……ああ」
クラスメイトの男子が晃くんの結果を伝えるけど、晃くんは気のない様子。
晃くんも、成績は学費免除の手段でしかないからなあ。
「なんだよお前、その反応は! また司と一位争いすんだろ?」