そのまま首に手を廻され引き寄せられて、晃くんの肩に鼻が激突した。

これ以上低くなったらどうしてくれる、この完璧イケメンめ。

じゃない! 立っている私が座っている晃くんに抱き寄せられている格好だから、見た目的に色々と問題を呼びそうな――

「あの、晃くん、これはさすがにっ」

「あ、ごめん。嬉し過ぎてつい……」

許した。

晃くんは慌てて離してくれた。

隣の巽は不思議そうな顔をしている。

「咲雪、晃に抱き付かれんの大丈夫なんだ?」

「? うん、だって晃くんだし」

「男嫌いの咲雪にしては珍しいなーとね」

あー、それか。

「別に男嫌いなわけじゃないよ。なんか昔っからヘンな絡まれ方するから苦手なだけ。お母さんに辛い思いさせたのもクズだし」

忌々しい、あのクズ。

毒を吐いた私にも、巽は慣れた様子だ。

「……あ、そういやさ――

「ゆ、雪村くん!」

巽が何か言いかけたとき、女子の大きな声が響いた。

振り返ると、クラスの女子が集まっていた。

廊下からは別のクラスの生徒もこちらをのぞいているのが見えた。

う……。ちょ、ちょっとやりすぎた……かな?

「咲雪ちゃんと付き合ってるの……?」

やっぱり! ……晃くんのばか。さっきのはやり過ぎだって……。

いや、原因は先に呼びかけた私……ここは私が誤解を解かねば! と思ったとき、晃くんが穏やかな口調で言った。

「さゆは俺の大事な子だよ。ずっと」

こ、晃くん! 確かに付き合ってはいないけどその言い方! 絶対誤解され――

「やっぱり! 雪村くんと咲雪ちゃん、いつ付き合うんだろうって疑問だったんだよー!」

え。

「成績トップの美形同士、絵になるよね~」

ええ?

「あー、やっぱ咲雪さん、雪村かよー。わかってたけどな……」

「うん、わかってたけどな……」

えええ? ど、どういうこと……?

「どうやら好意的にとられてるようですなー」

腕を組んだ巽がのんびりした口調で言う。