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「お、咲雪おはよう」
「咲雪ちゃんおめでとう~! 二位だよ!」
教室に入るなり抱き付いてきた琴ちゃんと、クールな凛ちゃんに「おはよう」と返す。ん? 二位? ……あ、たぶんあれだ。
私に抱き付いたままの琴ちゃんの肩を、ぽんと叩く凛ちゃん。
「残念だが、琴。咲雪は二位ではおめでとうじゃないんだ」
凛ちゃんは軽く頭を振りながら、残念な報告でもしている感じだ。
それに琴ちゃんは納得がいかなかったらしい。
「なんで? すごいじゃん! 学年二位だよ⁉」
噛みつく勢いの琴ちゃんに、凛ちゃんはやっぱり軽く頭を振った。
「雪村が一位だろう? 雪村が一位、咲雪が二位。中学の三年間、それは揺らがなかったんだ……」
「中学でもそんなことやってたの⁉」
遠い目をする凛ちゃんの説明に驚く琴ちゃん。
私はから笑いを浮かべることしか出来ない……。
凛ちゃんは腕を組んで、すごく風格のある人の雰囲気をかもしだしてきた。
「雪村……さすが咲雪のライバルだぜ……」
「こ――雪村くんと咲雪ちゃんがライバルってそういう意味だったのっ?」
あはは……。
私が晃くんと仲良しなことを隠していたら、いつの間にか私たちの関係はライバルってことになっていた。
テストの結果が原因だと思うんだけど……でも、そう認識されているときは、「雪村くんに勝ってね!」とか応援はしてもらっても、嫌がらせはされたことがなかった。
晃くんは晃くんで「咲雪ちゃんには負けないで!」とか言われるみたい。
周りの態度がこうなんだけど、実を言うと私も晃くんも、成績で争ったりしてはいない。
中学からトップと次点の成績を保ってきたのは、お互い、高校で学費免除の特待生になるためだ。
金銭面でお母さんたちに負担をかけたくないから。
おかげで現在、学年では私と晃くんの二人が特待生になっている。
だからこれからも、成績を落とすわけにはいかない。
琴ちゃんが言っていたのは、高校で初めての中間テストの結果のことみたい。
琴ちゃんに手を引かれて結果が張り出されている廊下に出る。
私たちのクラスは一組だから、昇降口から最短距離の階段で来ると一番手前になっていて、結果表はもっと奥のクラスの壁に貼ってあった。
そこには人だかりが出来ていて、一位に晃くんの名前がある結果表を前に、琴ちゃんがつぶやいた。
「そっかー。雪村くんも頭よかったんだ」