『昔の、大して仲良くもなかった同級生が何言ってんだって感じだけど、たぶん咲雪ちゃんのことだろうな、って存在のこと、中学の頃の一度逢ったときに聞いたんだ。その人のおかげで今、楽しく過ごせてるって言ってた。この先、昔の晃を知ってる人もいるかもしれないけど、今いるのは琴だけだから、だから――咲雪ちゃん、晃のこと、よろしくお願いします。……って、なんか偉そうだね。気に障ったらごめんねっ』

「……ううん。承知しました。でもこれからは、琴ちゃんは晃くんの友達なんだからね? ――ううん。きっと今までも、琴ちゃんと晃くんは友達だったよ」

晃くんは、親しいと思っていない人を下の名前で呼ぶようなタイプじゃない。

凛ちゃんのことも苗字呼びだし。

『……咲雪ちゃんに琴と晃がどんな風に見えてるのかわからないけど、琴は晃のこと、隙を見ては殴り倒したいって対象だからね?」

「お、押し倒す……⁉ 琴ちゃんそんなカゲキな……!」

まさかの桃色展開⁉ すかさず琴ちゃんが

『そんなことしないよ! 殴る! 殴り飛ばす方だから!』

「あ、そっちか……びっくりした……」

殴り飛ばすのも駄目だけど。

『琴もびっくりしたよ。ちなみに咲雪ちゃんは晃のこと押し倒したの?』

「耳元でフライパンとかおたまで騒いで起こそうと思ったことはあるよ。でも私より早く起きてたから実行したことはない」

『……咲雪ちゃんの方がカゲキでは……』

「そもそも琴ちゃんはなんてこと訊いてるの」

『いや、そもそもは咲雪ちゃんの聞き間違いだよ』

「……確かに」

あはは、ですな。

『あとね……』

「うん?」

『咲雪ちゃんでよかったって思ったの』

………へ?

「なにが?」

『晃が支えになってるって言えるほどの人が、咲雪ちゃんでよかったって思った。琴は何も出来なかったけど……咲雪ちゃんと出逢えて、一緒にいられて、晃は幸せだろうなって思った』

「………―――――」