お風呂を先に入る順番は交代にしていて、今日は私が先にいただいた。
自分の部屋で床に座って髪を乾かしていると、目の前のローテーブルに置いたスマートフォンの画面が変わった。着信だ。
すぐにドライヤーをオフにしてテーブルに置いて、電話に出る。
「はーい。琴ちゃん?」
『咲雪ちゃん、今いいかな?』
「うん。大丈夫だよ」
一度腰をあげて、ベッドの端に座る。
手で梳いてみると、髪の毛はほぼ乾いていた。ドライヤーは終わりでいいな。
『今、近くに晃いる?』
「晃くんならお風呂行ってるよ。私は自分の部屋」
部屋で言うと、晃くんが使っているのは向かいになるから、もし部屋にいたらこちらの声は聞こえているかもしれなかった。
晃くんに用だったのかな? と思って、
「晃くん、呼んで来る?」
そう訊くと、
『ううん。咲雪ちゃんに話があったの。晃はいない方がいい』
とのお答えだった。……なんだろう?
『あのね、ちょっと咲雪ちゃんに訊いておきたいことがあって……』
「なに?」
普段、琴ちゃんや凛ちゃんとの連絡はメッセージが多い。
電話やビデオ通話で話すこともあるけど、さっきの今で何かあったのだろうか。
『……昼間の感じからして、咲雪ちゃん、昔の晃の家族にあったこと、知ってるんだろうなって思ったんだけど……』
「……うん。晃くんから聞いてるよ」
晃くんの家族にあったこと……。
そっか、小学校が一緒だったってことは、琴ちゃんは当然……。
『……晃、咲雪ちゃんにはなんでも話せるんだね……』
琴ちゃんの声は、驚いているというよりは納得している感じだった。
「巽も知ってるよ。たぶん、私より巽の方が知ってることも多いと思う」
巽と晃くんは、周囲も認める『親友同士』だから。
『……琴、全然知らなかったんだ』
「………え?」
知らなかった? とは。