巽と幼馴染っていうのは隠していなかったから、巽に諫められて、ついでに私たちが付き合っている事実はないと言ってくれた。

晃くんの親友にそう断言されれば、信じないわけにはいかなかったのだろう。それで引いてくれた。

……ただ、それ以来女の子と、どうすれば友達になれるのかわからなくなっちゃって……一人でいたところに声をかけてくれたのが、凛ちゃんだ。

巽が助けてくれた件は後になって晃くんにも知られて、お母さんについてお互いの家を行き来するようになったあたりで、晃くんの方から、仲いいことは周りに伏せようと言われた。

言われたときは戸惑ったけど、お休みの日や家では仲良しの晃くんとお話出来るから、わかったと答えた。

晃くんに心配をかけるのも嫌だったから。

「……少し、様子を見たいと思う。まさかだけど、二人をいじめの対象になんて絶対したくないから」

凛ちゃんと琴ちゃんを、私の巻き添えにしてしまうなんてことはあってはいけない。

「ん。そっちの判断はさゆに任せる」

穏やかな顔で頷いてくれた晃くん。今日も優しいなあ。

それから、晃くんが朝ごはんを用意してくれたから、晃くんが身支度をしている間に食器を洗って、お弁当の準備をする。

晃くんがごはんを作ってくれている間に、私は準備を済ませているから。

このあたりの分担は、昨日決めておいたんだ。

「晃くん、お弁当」

「ん? ああ、ありがとう」

先に家を出る晃くんに、玄関でお弁当の包みを渡す。

鞄に入れているのを見て、ふと思った。

「今の奏子さんに見られたら、『あんたたちさっさと結婚しなさい』って言われそうだね」

「ああ……言いそうだな」

二人して苦笑いを浮かべる。

奏子さんはその手の冗談が好きなのか、よく晃くんと私をからかってくるんだ。全然そんなんじゃないのに。

「いってらっしゃい」

「……行ってきます?」

疑問符つきの返事をして、晃くんはやっぱり苦笑いしながら家を出た。

うちから高校へは歩いて二十分くらい。

私は五分ほどしたら出る予定だ。

この土日はお母さんたちの出張の準備とかお見送りで凛ちゃんにも琴ちゃんにも逢えなかったから、今日は三日ぶりに逢えるんだ! 楽しみ~!