「何作るんだ?」

「フォンダンショコラ」

答えたのは琴。なんと。

「やっぱり俺も手伝う」

琴の答えに、俺は腕をまくる。

「なんで晃が出てくんの! 琴と咲雪ちゃんの友達時間なのに!」

「俺も食いたいから」

「琴ちゃん、晃くんが一緒でもいいんじゃないかな?」

「~~~咲雪ちゃんが言うんなら……」

ものすごく不満そうな顔で琴が肯いた。

「……晃って主夫入ってるんだ……」

琴はぶつぶつ言いながら、持って来た袋から材料を取り出し始める。

「だって晃くん、ずっとおうちのことやってたものね。主婦レベル私より高いよ」

「さゆ、だからそういうの恥ずかしいから……」

「ごめん、でも私が晃くんを尊敬してるのはずっとだから」

「……えー、何このコント……」

琴がボソボソ言っているけど、気にしない。

ただ、さゆとのやり取りが楽しい。

俺も手伝うとは言ったんだけど、琴はどうしてもさゆと二人で作りたいらしく、「晃は見学!」と言われてしまった。

これ以上琴に突っかかっても面倒なだけだから、ここは引くことにした。

冷蔵庫に軽く背を預けて二人の作業を見る。

「咲雪ちゃんって、藤沢くんと小学校一緒なんだっけ?」

「うん。更に言うと保育園から今まで一緒だよ」

「幼馴染過ぎるね」

「いやあ。それほどでも」

「……藤沢くんて、甘いの好きかな?」

琴が小さな声でそう言った。

あ、そういうことか。

「巽? 好きだよー。巽、食べ物の好き嫌いないよ」

そしてそういうことに全然気づかないさゆ。

……傍から見りゃあ微笑ましいけど、さゆの場合はそうも言っていられない理由がある。

「ふ、藤沢くん、来るんだよね?」

「たぶん」

「晃には訊いてない!」

俺が答えると怒鳴られた。

……どうしてさゆにはこいつが天使に見えるんだろう。目ぇ悪いのかな。今度眼科に連れて行こうかな。

「琴ちゃん、巽のこと苦手だっけ?」