また、ぎんっと晃くんを睨んで来る。

……晃くん、なんでここまで琴ちゃんに嫌われてるの? 琴ちゃんは晃くんに興味ないみたいなこと言ってたと思うんだけど……。

「真面目になる気ねーだろ琴! 雪村もヘンな挑発するなよ! ――って、この中で雪村と親しくないの、あたしだけなの?」

琴ちゃんの押さえ役をしてくれている凛ちゃんが、はたと気づいたように自分を指さす。

「相馬とは中学以前は面識ないな」

そうなんだ……そう聞いてなんだかほっとしてしまった。……うん? なぜ安心する? 自分よ。

「ふーん? じゃああたしとも親しくなるか?」

「遠慮しとく。相馬はなんか怖いから」

怖くはないよ? 凛ちゃん、しっかり者で優しいよ。

……と思ったけど、また私が口を挟む前に琴ちゃんが割って入った。

「琴のことも苗字で呼んでよね! 昔のこと話したら確実に殴りに行くから!」

「……わかったよ」

……琴ちゃん、本当にマジメになる気あるのかな……。

スッと、晃くんが立ち上がった。

「さゆ、巽も呼んでいいか? なんか居心地悪い」

「……それは主(おも)に前のお方の目線の所為だと思うけど……いいよ」

琴ちゃんの眼光、鋭すぎる。

晃くんがスマホを手にして廊下に出ている間も、ドアの方を睨んでいた。

「琴、お前ってどれが本性なの? ヤンキー気質が地?」

凛ちゃんが、軽く禁断の質問っぽいことを訊いていた。

琴ちゃんは一転、いつも通りな八重歯をのぞかせた天使の笑顔を見せる。

「どっちかって言うと今の琴が素かな。ヤンキーだった頃の方が猫被っていたって言うか、装ってたから」

……ヤンキーを装っていたって、なんでそんなことしていたんだろ。

「不良な猫ってどんなだ?」

凛ちゃんは興味が出たようで、どんどん訊いていく。

「百戦錬磨」

「マジか。負けなしか」

「うん。琴が相手してたの女の子だけだけど、殴り合いっこなら負けなかったよ」

「うん。可愛く言っても殴り合いっこのどす黒さは隠せないな」

殴り合いっこって……。

しかも琴ちゃん、誰かとつるまずにいたんだよね? さっき一匹狼って言っていたし。

ヤンキーの世界なんて全然わからないけど、多人数と喧嘩することもあったんじゃないかな……。

「むー。晃がばらさなきゃ知られなかったのにー」