ていた? 凛ちゃんと声がそろってしまった。琴ちゃんは顔を振り上げる。
「なーっ! ほんと晃のデリカシーないとこキライ!」
そう叫んでから、ふうっと空気が抜けるように息を吐いた。
「……そうだよ。琴、中学んとき不良だったの。ヤンキーだったの。一匹狼だったの。でも高校に入ったら真面目になろうと思って、知ってる人のいない学校に入ったら晃がいるし、晃は琴の黒歴史知ってるし、挙句の果てに咲雪ちゃんと仲いいし! さっきから『さゆ』って呼んでるよね⁉」
「俺の方が琴よりさゆと仲いいからかな」
「くっそむか!」
「こ、琴? ちょっと落ち着け。血圧あがりすぎだろ、お前」
凛ちゃんが隣から、今度は琴ちゃんの肩を摑んだ。
その凛ちゃんをぎっと睨む琴ちゃん。今まで見たことないくらい鋭い。
この琴ちゃんがやんきーだった……? ……ありだな。ギャップ萌え? ってやつか!
可愛くてふわふわしている琴ちゃんの鋭い一面を見て、更に琴ちゃんが大好きになった。
あ、でも悪いことはしていたのかな。犯罪になってしまうこととか……。
「琴ちゃん」
「う……な、なに? 咲雪ちゃん……」
琴ちゃんが、そろりと私を見て来た。
「ヤンキーな琴ちゃんは、警察に捕まるようなこともしてたりしたの?」
「うう……凛ちゃん~! 咲雪ちゃんが純粋過ぎて真っ直ぐ過ぎて直視できないよ~! 琴はけがれている!」
それってやっぱり……凛ちゃんの腕に抱き付く琴ちゃんをはらはらした気持ちで見ていると、さゆ、と晃くんに呼ばれて視線をうつす。
「琴は中学んときは仲間とか作らないで、売られた喧嘩は買うってタイプだったみたいだ。傷害には引っかかるかもしれないけど、それ以上のことはないって聞いてる。窃盗とか脅迫はないって」
「誰に聞いたの?」
「中学んとき逢った本人」
晃くんもしっかり確かめていた。
「そうだよ」
ふっと、琴ちゃんが真剣な様子で顔をあげた。
「琴、殴り合いは得意なの。だからこの間男を一発殴らないと気が済まない」