「あ、あのね? 凛ちゃん、琴ちゃん。実は私と晃くんのお母さん同士が、中学の頃保護者会で知り合って仲良くなって、一緒に起業したの。それが私たちが中一のときで、晃くんとは家族ぐるみの付き合い? みたいな感じでずっと来てて……」

「今、俺の母親とさゆのお母さんが一緒に海外出張中で、さゆを独りにするの危ないってことで俺が一緒に住んでる」

晃くんが、そう補足してくれた。

「だから付き合ってるとかじゃなくて――」

「でもさっき、晃が咲雪ちゃんに抱き付いていたよね?」

私の否定を遮って、琴ちゃんが前かがみになってきた。

「あれは――」

……言えないよね? 晃くんの沽券(こけん)を守るためにも。

「俺、雷が苦手でさっきさゆに助けてもらってた」

言った――! 晃くん素直!

けれど琴ちゃんは癇に障ったのか、ぶちっと何かがキレたような形相になった。

「雷だったら琴も苦手だもん! なんで晃なら抱き付いていいの⁉」

今にも晃くんに殴りかかりそうな琴ちゃんを、凛ちゃんが隣から腕を掴んで引き留めながらため息をついた。

「琴? お前も何言ってんだ? ってか、さっきから雪村のこと『晃』って呼んでないか?」

「あ」

琴ちゃんがしまったというカオをした。凛ちゃんは続ける。

「もしかしてだけどお前らの方が付き合ってたとか?」

……ええ⁉ 私が勢いよく晃くんの方を見ると、晃くんは琴ちゃんと自分を交互に指さした。

「琴と俺、一時期小学校が一緒だっただけ。付き合ったなんて絶対ない。ありえない。気持ち悪いこと言うな」

こ、琴⁉ 晃くんが女子を名前で呼んだ⁉ 三年以上一緒だけど初めて聞くことだ。そして琴ちゃんには意外すぎるほど辛辣だった。

晃くんの発言で琴ちゃんは勢いが殺されたのか、ソファに深く座って頭を抱えた。

「……晃が転校する前の話だよ。前の苗字のとき」

前の苗字って……晃くん。

「琴ちゃんと仲いいなんてなんで黙ってたのっ?」

今度は私が晃くんに詰め寄ると、晃くんはまた、はたはたと手を振った。

「仲良くない。すげえ嫌われてる。ナメクジ扱いされてる。高校でまた逢って、話しかけたら他人のフリしろって怒られた。琴が中学んとき荒れてたの知ってるからだと思う」

「「……荒れ?」」