六月。梅雨に入りました。晃くんと暮らし始めて一週間です。
……雨の季節です。
「さゆ、大丈夫か?」
「んー……頭痛い」
「気圧にやられたか……」
「そうみたい……季節の変わり目って苦手なんだよねー……」
今日は土曜日。
朝から雨で、お昼近い時間になって私はダウンした。
リビングのラグに直接座って、勉強道具を広げたローテーブルに突っ伏す。
晃くんはノートパソコンを膝に乗せて、私の斜め前のソファに座っている。
「そういうときは休んだ方が――」
「……だよね。晃くんは大丈夫なの? ――」
聞こえたのは平然としている声だったから、のそっと顔をあげると、あれ? 晃くんが固まっていた。
「晃くん?」
少し離れているけど目線の先で手を振ると、はっとしたように瞬いた。
「かみ、なり……」
「え?」
晃くんに言われて、立ち上がって窓のレースカーテンを少しだけ開けた。
雨を落とす暗い空の遠いところが、一瞬明るくなった。
「雷かー。よく聞こえたね。って、晃くん?」
いきなり、晃くんに腕を摑まれた。
晃くんはソファに座ったままだから、身体が斜めになった。
「ごめん、さゆ。お願いだからここにいて」
「へ? いや、こんな雨だから外へ行く用事もないけど……どうしたの?」
「………」
晃くんは答えず、ぎゅっと目を瞑って口を結んだ。こう、くん?
「あの……本当に大丈夫? わっ⁉」
心配になって、顔をのぞこうと身をかがめた瞬間。
「ごめん、雷、聞こえなくなるまでだけだから……」
こ、晃くんに抱き込まれた……?
晃くんの両腕がガッチリ私を抱きしめていて、晃くんの声は顔の横から聞こえてくる。
………。
「何か、怖いことでも思い出しちゃった?」