「……今気づきましたみたいな反応ですね?」
「今気づいたから。俺は気にしないけど……」
え、気にしないの? 男子ってそういう感じなの? ちょっと驚いたから、続く語気が荒めになってしまった。
「私は気にするよ。晃くんは自分の……服、私に見られてもいいんだ?」
「さゆだったら盗むとかしないだろ」
「………盗む?」
え、盗難事件が家の中で起きる前提だったの?
「うん。よくジャージとかネクタイとか、更衣室から盗まれたことあるから」
あ……イケメンあるある? なんて返したらいいのか……あ。
「巽もたまにそういうこと言ってたっけ……」
そういえば巽もイケメン枠だったはず。
「巽は他校の奴らにも盗られてるみたいだな」
「なんで?」
他校って? まさかうちの学校に侵入してるの⁉
「練習試合とか、他の学校行く機会多いだろ」
あ、そういう。
「色んな学校のセキュリティが心配だね」
まさか盗難がそこまで頻発していたとは……しかも幼馴染が被害にあっていたなんて……。
「その度に新しいの用意しなくちゃで、母さんに負担かけた。盗んだ奴らは未だに赦せない。誰だかわかってないけど」
あー……晃くんも、奏子さんに負担かけたくないって特待取ったくらいだから……。
「なんか、晃くんなら大丈夫な気がしてきた」
話しているうちに、勢いこんでいた自分がバカらしくなってきた。
こういう晃くんだから、同居することに不安はなかったのに。
「なにが?」
「別に私の下着見たって、私が気まずくなるだけで晃くん気にしなさそうだし」
「え……それは……」
急に晃くんが口ごもった。
「さ、さすがに、それは俺も気恥ずかしい、と思う……」
ふいっとそっぽを向かれた。見える耳が少し紅い気がするんだけど……。
ちょ、私まで恥ずかしくなってきた! さっきその勢いがそがれたと思っていたのに!