「―――――⁉」
え、えええ⁉ まさかそこ見られてた⁉
焦りに焦る私とは裏腹に、晃くんはため息い交じりに口を開いた。
「それで、さゆ。勝手な判断だけど、母さんと小雪さんのこと話した」
「あ、そう、なんだ……」
晃くん冷静だな……私なんて頭の中が大運動会だよ。ついっと、厳島先生が少しだけ鋭い目で見て来た。
「咲雪ちゃん、雪村くんからは聞いたんだけど、やましいことがあるわけじゃないんだね?」
やましいこと⁉
「ないですっ。お母さんと奏子さん――晃くんのお母さんの判断で一緒に住んでるだけですっ」
晃くんが話しているのなら、私が隠しては怪しくなるだけだ。厳島先生は、足をほどいて立ち上がった。そのまま私の前に立つ。
「ご家族の判断なら私が突っかかるとこではないから、秘密にすることは約束するよ、咲雪ちゃん」
背の高い厳島先生が傍に立つと、見上げる格好になる。
秘密にしてくれる……よかった。厳島先生が把握して、その上で見逃してくれるなら……。
ふと、厳島先生が身をかがめて、私の耳にささやいてきた。
「ただ、ライバル扱いされてる二人が同居するほど仲がいいとはね。なんか進展あったら教えて?」
「……?」
進展? なんの? 私が訊き返す前に、晃くんの声が飛んできた。
「厳島先生。下手にさゆに近づくと親友二人にころされますよ」
「それは怖い」
私の目の前から離れて、肩をすくめる厳島先生。……それ言うために呼んだのかな?
「先生? 何かご用だったんじゃ……?」
厳島先生は、また私たちの方を向いて椅子に座り直す。
「いや、雪村くんからは聞いたけど、本当かどうか確認したくてね。それだけだよ」
「……そうですか……」
特に用があったわけじゃないんなら、凛ちゃんたちのとこに戻らなきゃかな……。
「先生、ここで弁当食って行ってもいいですか?」
いきなりそう言ったのは晃くんだ。
「昼ごはんか? 友達んとこ行かなくていいのか?」