井戸の水で頭と体を洗って、汚れを落とすと部屋に案内された。
クローゼットには男性用の服が沢山ある。
レベッタさんは誰も使ってないと言ってたから、この服の持ち主はいないみたい。すべて俺にくれるとのこと。
黒いズボンがあったので、手に取って体に合わせてみると、ちょっと大きめだった。しかも何故か、股の部分に液体を塗った跡が残っている。触ってみるとカピカピだった。
二人には申し訳ないけど、ちょっと気持ち悪い。
着たいとは思わなかったので別のズボンを手に取る。
色はベージュで、肌触りが非常に滑らか。生地は厚め丈夫そうな所が気に入った。これなら木の枝に引っかけても破れそうにない。同じ素材で淡い緑色のチュニックもあったので、俺はこの二つを着替えとして選んだ。
濡れた服を脱ぐと、カボチャっぽいパンツ一枚の姿になる。
森の中で暮らしていたこともあって、体は引き締まって腹筋は割れている。非常に男らしい姿だけど、女性であるレベッタさんが手を握ったとき、振りほどく力はなかった。
そこに違和感を覚える。
もしかしたら、見た目と実際の筋力は違うのかも。この部分についてもちゃんと知っておかないと、後で困ったことになりそう。具体的に何と言われた困るけど、本能がそう言っているように思えた。
新しい服を着て腰にベルトを巻き、着替えは終わった。
部屋を出て階段を降りるとリビングに戻る。
「かわいい~~」
両手を広げたレベッタさんに抱き付かれてしまった。シトラス系の爽やかな匂いがして、気持ちが落ち着く。さらに胸がダイレクトに当たっているので、ずっとこのままずっと抱きしめて欲しいと思える魅力があった。
「気持ちはわかるけど、イオディプス君は嫌がってるんじゃない?」
「そんなことないよ。見て、この顔っ!」
レベッタさんは俺の後ろに移動する。頭上に胸が乗って嬉しい。
心地よさによって思考が鈍っているけど、幸せだから良いか。
「すごく、ニヤけてる」
仕方ないでしょ。
こんなことされて、真面目な顔をしろってほうが無理な話である。
押し倒したいという欲望は理性を総動員してねじ伏せ、レベッタさんから離れようとする。
体はびくともしなかった。
レベッタさんの腕が邪魔をして動かせないのだ。
「あのー?」
「もうちょっとだけ……」
無言でヘイリーさんがスタスタと歩いて近づくと、レベッタさんの頭を軽く叩いた。
「しっかりしなさい」
「はーーい」
レベッタさんの腕から力が抜けた。
俺は拘束から抜け出すと、話が通じそうなヘイリーさんに話しかける。
「あの、聞きたいことがあるんです」
「わかってる。座って話しましょう」
俺から離れたヘイリーさんはソファに座った。
テーブルにはコップが三つあって、飲み物が入っている。
「普通の紅茶だから安心して」
コップを見ていたことに気づいたようで、ヘイリーさんが教えてくれた。
ちょっときつめな目をしているけど意外と優しいみたい。
「ありがとうございます」
歩いてソファに近づこうとしたら、両脇の下に手が回って持ち上げられてしまった。犯人はレベッタさんのようだ。
「姉さんが移動させてあげますからね」
体重は六十キロ以上あると思うのに、レベッタさんは軽々と運んでソファに座った。
俺は彼女の太ももの上だ。両腕が俺の体を押さえつけて、逃げられそうにない。
背中に柔らかい感触がするので気になって仕方がない。ちょっと下半身が元気になっているのは秘密だ。
ヘイリーさんの視線がやや下になっていたような気がしたので、足を組んで誤魔化しつつコップを手に取る。
鼻を近づけると甘い香りがした。アルコール臭はしないので、俺が飲んでも大丈夫そうだ。
コップを傾けて口に含む。ほんのりと果実系の甘みを感じた。喉に流し込むと体中に染み渡っていく感覚がある。結構、喉は渇いていたようだ。
半分ほど飲んだのでローテーブルに置こうとする。
「持ってあげるね」
レベッタさんに奪われてしまった。しかも、俺に黙って飲んでいるんだけど。
間接キスになるんだけど気にならないのか? この人の行動は読めないなぁ。
「知りたいことは何でも教えてあげる。気兼ねなく質問して」
何事もなかったかのようにヘンリーさんが話しかけてくれた。
コップの使い回しなんて普通のことなのかもしれない。俺が気にしすぎなだけか。
これから真面目な話をするんだし、細かいことは後回しだ。頭を切り替えよう。
「では、男性が貴重なことについて教えてもらえませんか?」
「種族に関係なく、百人の子供がいたら男は一人しかいないからだよ」
「他は全員女性なんですか?」
「うん。昔からずっと変わらない」
え、そんなことありえるの? 地球で過ごしていた常識というものが、ヘイリーさんの話を嘘だと言ってくるが、どちらを信じるかなんて悩むまでもない。
スキルという超常現象すら存在するのだから、常識は一度、捨てるべきなのだ。目の前にいる人の言葉を信じるべきだろう。
「だから男は貴重。守らなければいけない存在だ」
「出会ったとき、レベッタさんが動揺していた理由はわかりました。そりゃぁ、保護しようとしますね」
俺を男だと確認したときの表情を思い出す。どもっていたし、珍獣を発見したような目をしていたのだ。
その時は、ちょっと変わっている人だななんて、のんきなことを考えていたけど、どうやら変わっているのは俺の方だったらしい。
クローゼットには男性用の服が沢山ある。
レベッタさんは誰も使ってないと言ってたから、この服の持ち主はいないみたい。すべて俺にくれるとのこと。
黒いズボンがあったので、手に取って体に合わせてみると、ちょっと大きめだった。しかも何故か、股の部分に液体を塗った跡が残っている。触ってみるとカピカピだった。
二人には申し訳ないけど、ちょっと気持ち悪い。
着たいとは思わなかったので別のズボンを手に取る。
色はベージュで、肌触りが非常に滑らか。生地は厚め丈夫そうな所が気に入った。これなら木の枝に引っかけても破れそうにない。同じ素材で淡い緑色のチュニックもあったので、俺はこの二つを着替えとして選んだ。
濡れた服を脱ぐと、カボチャっぽいパンツ一枚の姿になる。
森の中で暮らしていたこともあって、体は引き締まって腹筋は割れている。非常に男らしい姿だけど、女性であるレベッタさんが手を握ったとき、振りほどく力はなかった。
そこに違和感を覚える。
もしかしたら、見た目と実際の筋力は違うのかも。この部分についてもちゃんと知っておかないと、後で困ったことになりそう。具体的に何と言われた困るけど、本能がそう言っているように思えた。
新しい服を着て腰にベルトを巻き、着替えは終わった。
部屋を出て階段を降りるとリビングに戻る。
「かわいい~~」
両手を広げたレベッタさんに抱き付かれてしまった。シトラス系の爽やかな匂いがして、気持ちが落ち着く。さらに胸がダイレクトに当たっているので、ずっとこのままずっと抱きしめて欲しいと思える魅力があった。
「気持ちはわかるけど、イオディプス君は嫌がってるんじゃない?」
「そんなことないよ。見て、この顔っ!」
レベッタさんは俺の後ろに移動する。頭上に胸が乗って嬉しい。
心地よさによって思考が鈍っているけど、幸せだから良いか。
「すごく、ニヤけてる」
仕方ないでしょ。
こんなことされて、真面目な顔をしろってほうが無理な話である。
押し倒したいという欲望は理性を総動員してねじ伏せ、レベッタさんから離れようとする。
体はびくともしなかった。
レベッタさんの腕が邪魔をして動かせないのだ。
「あのー?」
「もうちょっとだけ……」
無言でヘイリーさんがスタスタと歩いて近づくと、レベッタさんの頭を軽く叩いた。
「しっかりしなさい」
「はーーい」
レベッタさんの腕から力が抜けた。
俺は拘束から抜け出すと、話が通じそうなヘイリーさんに話しかける。
「あの、聞きたいことがあるんです」
「わかってる。座って話しましょう」
俺から離れたヘイリーさんはソファに座った。
テーブルにはコップが三つあって、飲み物が入っている。
「普通の紅茶だから安心して」
コップを見ていたことに気づいたようで、ヘイリーさんが教えてくれた。
ちょっときつめな目をしているけど意外と優しいみたい。
「ありがとうございます」
歩いてソファに近づこうとしたら、両脇の下に手が回って持ち上げられてしまった。犯人はレベッタさんのようだ。
「姉さんが移動させてあげますからね」
体重は六十キロ以上あると思うのに、レベッタさんは軽々と運んでソファに座った。
俺は彼女の太ももの上だ。両腕が俺の体を押さえつけて、逃げられそうにない。
背中に柔らかい感触がするので気になって仕方がない。ちょっと下半身が元気になっているのは秘密だ。
ヘイリーさんの視線がやや下になっていたような気がしたので、足を組んで誤魔化しつつコップを手に取る。
鼻を近づけると甘い香りがした。アルコール臭はしないので、俺が飲んでも大丈夫そうだ。
コップを傾けて口に含む。ほんのりと果実系の甘みを感じた。喉に流し込むと体中に染み渡っていく感覚がある。結構、喉は渇いていたようだ。
半分ほど飲んだのでローテーブルに置こうとする。
「持ってあげるね」
レベッタさんに奪われてしまった。しかも、俺に黙って飲んでいるんだけど。
間接キスになるんだけど気にならないのか? この人の行動は読めないなぁ。
「知りたいことは何でも教えてあげる。気兼ねなく質問して」
何事もなかったかのようにヘンリーさんが話しかけてくれた。
コップの使い回しなんて普通のことなのかもしれない。俺が気にしすぎなだけか。
これから真面目な話をするんだし、細かいことは後回しだ。頭を切り替えよう。
「では、男性が貴重なことについて教えてもらえませんか?」
「種族に関係なく、百人の子供がいたら男は一人しかいないからだよ」
「他は全員女性なんですか?」
「うん。昔からずっと変わらない」
え、そんなことありえるの? 地球で過ごしていた常識というものが、ヘイリーさんの話を嘘だと言ってくるが、どちらを信じるかなんて悩むまでもない。
スキルという超常現象すら存在するのだから、常識は一度、捨てるべきなのだ。目の前にいる人の言葉を信じるべきだろう。
「だから男は貴重。守らなければいけない存在だ」
「出会ったとき、レベッタさんが動揺していた理由はわかりました。そりゃぁ、保護しようとしますね」
俺を男だと確認したときの表情を思い出す。どもっていたし、珍獣を発見したような目をしていたのだ。
その時は、ちょっと変わっている人だななんて、のんきなことを考えていたけど、どうやら変わっているのは俺の方だったらしい。