男だってバレると危ないからと言われ、レベッタさんがローブを貸してくれた。
フードをかぶって顔を隠すと、外壁に作られた門を通る。
「身分証明書を出せ」
事前に必要だと言われていたので、準備はしていた。
手に持っていた身分証明書となる鉄のカードを取り出すと、女性の兵士に渡す。
「出身はルクス村か。遠くから来たんだな」
と言われただけで、身分証明書は無事に返された。
出身国と村、そして持っているスキル名だけしか書かれてない。名前や性別すら確認されないのだから、ざる見たいな管理体制だ。俺が殺人鬼だったらどうするつもりなんだろう。大人しくしていれば問題ない?
なんて考えてみたが、俺には関係ないので気にしなくていいか。
身分証明書は本物なのだから、堂々としていればいいのだ。
兵士から返してもらった身分証明書を無言で受け取ると、腰に付けたポーチへしまう。
ありがとう。なんて言おうとしたが、レベッタさんに声を出すなとお願いされていたことを思い出し、会釈だけで済ませる。
外壁の門をくぐって町に入ると、景色が一気に変わった。
左右には石造りの建物がずらりと並んでいる。高くても三階建てで青空が広く感じた。道行く人々の服装は、俺と似たような恰好が多い。近くの建物には馬車が止まっていて、数人の女性が荷物を店に搬入しているようだ。
想像していたとおり、文明レベルは低い。
視界に入っている人たち全員が女性というのは少しだけ違和感あるが、それは俺が地球の常識を捨てきれないでいるからだろう。この世界では男女の肉体構造に大きな違いがあって、女性のほうが力強い、なんてこともあるかもしれないのだから。
新しい環境になれるためにも、今までの知識は一度捨て去った方が良いかもしれない。
「パーティで購入した私たちの家に招待するよ。こっちに来てくれる?」
手を出されたので、自然とつないでしまった。
迷子にならないようにとの配慮なんだろう。なんとも気が利く女性だ。最初に出会った人が善良な性格をしていて助かる。この幸運に、俺は感謝しなければ。
大通りを二人で歩く。
フードが邪魔になったので取ろうとしたら、レベッタさんに頭を押さえられてしまった。
「取ったらダメ。もっと顔を隠して」
有無を言わさない力強い言葉だ。理由なく拒否して良い雰囲気ではない。
「分かりま――」
「ダメ。しゃべらないで」
柔らかい手で口を塞がられてしまった。腕は細く見えるのに力が強い。今まで感じたことないプレッシャーを放たれ、素直に素違うことにした。
口を閉じ、フードのはじを掴んで、深くかぶる。
足下しか見えない。
「手をつないでいれば安心だからね」
優しい声をかけられてしまった。
なんだか母さんを思い出す。俺はこういった雰囲気に弱いのだ。レベッタさんはいい人っぽいし、何とかなるだろうと、楽観的に考えることにした。
レベッタさんに手を引っ張られたので、足を動かしてついていく。
肉を焼いた香りがしたので、近くに屋台があるのかもしれない。罵声が聞こえてるし繁華街みたいなところなのかも。店の呼び込みをする女性の声も聞こえて、活気があるなと感じる。
つながっている手の温かさを楽しみながら歩いていると、周囲が静かになってきた。
道も土から石畳へと変化している。
今どこにいるのか聞こうと思ったが、俺が声を出してしまうと迷惑をかえてしまうので、黙ったままだ。
さらに十分ぐらいは歩いただろうか。
ようやくレベッタさんが止まった。
ガチャと、ドアノブの回る音が聞こえる。
「ここが私たちの家だよ。来てくれてありがとう」
フードはかぶったまま顔を上げる。
背筋がゾクッとした。
目が濁っていて、口からよだれが出ているのだ。
あえて例えるのであれば、飢えた野犬のような雰囲気である。
母さんのように、優しい女性がそんな顔をするはずがない。俺は目をこすってもう一度レベッタさんを見た。
普通だ。優しい笑みを浮かべている。やっぱり見間違えだったんだ。
新しい環境に慣れず疲れてしまい、幻覚を見てしまったんだろうな。
「もう、しゃべっても?」
「小声なら大丈夫だよ」
ようやく許可がおりた。
家へ入る前に、言いたかったことを伝える。
「安全な場所まで案内してくれて、ありがとうございます」
一人で途方に暮れていたところを助けてくれたのだ。
お礼をするべきだろうと思い、心から思っていることを伝えた。
「え、うそ……男が、またお礼を……!?」
「性別なんて関係ないですよ。何も知らない俺に手を差し伸べてくれたレベッタさんには、本当に感謝しているんですから」
手で口を覆い隠して、レベッタさんは驚いていた。目からは涙が流れている。少しどころじゃなく、すごく気持ちが伝わった……のか?
想定して以上のリアクションを取られてしまって、何をすれば良いかわからない。頭が真っ白になってしまい何も考えられず、思わず抱きしめてしまった。ついでに背中をポンポンと優しく叩いてしまう。
母さんがクソ親父に殴られて泣いていたとき、こうすると安心して眠ってくれたのだ。
その時の思い出があったから、行動に出てしまったのだろう。
「何があったか分かりませんが、きっと大丈夫ですよ」
俺の言葉が決め手になったのか、レベッタさんは声を出して泣き出した。
女性の体に触ってしまい、ちょっとした罪悪感を覚えつつ下半身が元気になってしまう。俺の息子よ。少しは空気を読むことを覚えろ。
フードをかぶって顔を隠すと、外壁に作られた門を通る。
「身分証明書を出せ」
事前に必要だと言われていたので、準備はしていた。
手に持っていた身分証明書となる鉄のカードを取り出すと、女性の兵士に渡す。
「出身はルクス村か。遠くから来たんだな」
と言われただけで、身分証明書は無事に返された。
出身国と村、そして持っているスキル名だけしか書かれてない。名前や性別すら確認されないのだから、ざる見たいな管理体制だ。俺が殺人鬼だったらどうするつもりなんだろう。大人しくしていれば問題ない?
なんて考えてみたが、俺には関係ないので気にしなくていいか。
身分証明書は本物なのだから、堂々としていればいいのだ。
兵士から返してもらった身分証明書を無言で受け取ると、腰に付けたポーチへしまう。
ありがとう。なんて言おうとしたが、レベッタさんに声を出すなとお願いされていたことを思い出し、会釈だけで済ませる。
外壁の門をくぐって町に入ると、景色が一気に変わった。
左右には石造りの建物がずらりと並んでいる。高くても三階建てで青空が広く感じた。道行く人々の服装は、俺と似たような恰好が多い。近くの建物には馬車が止まっていて、数人の女性が荷物を店に搬入しているようだ。
想像していたとおり、文明レベルは低い。
視界に入っている人たち全員が女性というのは少しだけ違和感あるが、それは俺が地球の常識を捨てきれないでいるからだろう。この世界では男女の肉体構造に大きな違いがあって、女性のほうが力強い、なんてこともあるかもしれないのだから。
新しい環境になれるためにも、今までの知識は一度捨て去った方が良いかもしれない。
「パーティで購入した私たちの家に招待するよ。こっちに来てくれる?」
手を出されたので、自然とつないでしまった。
迷子にならないようにとの配慮なんだろう。なんとも気が利く女性だ。最初に出会った人が善良な性格をしていて助かる。この幸運に、俺は感謝しなければ。
大通りを二人で歩く。
フードが邪魔になったので取ろうとしたら、レベッタさんに頭を押さえられてしまった。
「取ったらダメ。もっと顔を隠して」
有無を言わさない力強い言葉だ。理由なく拒否して良い雰囲気ではない。
「分かりま――」
「ダメ。しゃべらないで」
柔らかい手で口を塞がられてしまった。腕は細く見えるのに力が強い。今まで感じたことないプレッシャーを放たれ、素直に素違うことにした。
口を閉じ、フードのはじを掴んで、深くかぶる。
足下しか見えない。
「手をつないでいれば安心だからね」
優しい声をかけられてしまった。
なんだか母さんを思い出す。俺はこういった雰囲気に弱いのだ。レベッタさんはいい人っぽいし、何とかなるだろうと、楽観的に考えることにした。
レベッタさんに手を引っ張られたので、足を動かしてついていく。
肉を焼いた香りがしたので、近くに屋台があるのかもしれない。罵声が聞こえてるし繁華街みたいなところなのかも。店の呼び込みをする女性の声も聞こえて、活気があるなと感じる。
つながっている手の温かさを楽しみながら歩いていると、周囲が静かになってきた。
道も土から石畳へと変化している。
今どこにいるのか聞こうと思ったが、俺が声を出してしまうと迷惑をかえてしまうので、黙ったままだ。
さらに十分ぐらいは歩いただろうか。
ようやくレベッタさんが止まった。
ガチャと、ドアノブの回る音が聞こえる。
「ここが私たちの家だよ。来てくれてありがとう」
フードはかぶったまま顔を上げる。
背筋がゾクッとした。
目が濁っていて、口からよだれが出ているのだ。
あえて例えるのであれば、飢えた野犬のような雰囲気である。
母さんのように、優しい女性がそんな顔をするはずがない。俺は目をこすってもう一度レベッタさんを見た。
普通だ。優しい笑みを浮かべている。やっぱり見間違えだったんだ。
新しい環境に慣れず疲れてしまい、幻覚を見てしまったんだろうな。
「もう、しゃべっても?」
「小声なら大丈夫だよ」
ようやく許可がおりた。
家へ入る前に、言いたかったことを伝える。
「安全な場所まで案内してくれて、ありがとうございます」
一人で途方に暮れていたところを助けてくれたのだ。
お礼をするべきだろうと思い、心から思っていることを伝えた。
「え、うそ……男が、またお礼を……!?」
「性別なんて関係ないですよ。何も知らない俺に手を差し伸べてくれたレベッタさんには、本当に感謝しているんですから」
手で口を覆い隠して、レベッタさんは驚いていた。目からは涙が流れている。少しどころじゃなく、すごく気持ちが伝わった……のか?
想定して以上のリアクションを取られてしまって、何をすれば良いかわからない。頭が真っ白になってしまい何も考えられず、思わず抱きしめてしまった。ついでに背中をポンポンと優しく叩いてしまう。
母さんがクソ親父に殴られて泣いていたとき、こうすると安心して眠ってくれたのだ。
その時の思い出があったから、行動に出てしまったのだろう。
「何があったか分かりませんが、きっと大丈夫ですよ」
俺の言葉が決め手になったのか、レベッタさんは声を出して泣き出した。
女性の体に触ってしまい、ちょっとした罪悪感を覚えつつ下半身が元気になってしまう。俺の息子よ。少しは空気を読むことを覚えろ。