食事が終わった後、俺は眠くなったので部屋で就寝したが、女性陣は気づかず夜遅くまでお酒を飲んでいたらしい。
賭けはずっと続いていたらしく、テレシアさんは朝方に帰ったとのこと。その際、俺の使っていたコップがなくなったらしいけど、酔っ払って捨てたのか? スペアはいくつかあるので困ることはないが、酒癖は直してもらわらないと困るな。
「おはようございます。いよいよ、今日ですね」
ソファで手足を力なく伸ばし、ぐったりとしている二人に声をかけた。
返事はない。頭を手で押さえて痛みに耐えている。もうすぐスカーテ王女からの遣いがくるはずなんだけど、対応できるのだろうか。
「準備しておきますね」
王族と会うのだから身ぎれいにしなければいけない。部屋に戻ると寝巻きを脱ぎ捨てて、白いワイシャツに黒いジャケットを羽織る。下も黒いズボンだ。靴はいつもと違って革靴。歩きにくく窮屈ではあるが、マナーとして必要だと言われれば拒否できない。
いつもは前髪を垂らした髪型なので、ワックスみたいなものでセンター分けに変える。おでこを出したことで少しは大人っぽく見えることだろう。最後に歯磨きをして口内を綺麗にしてから、また二人のところに戻る。変わらずぐったりとしていた。
「そろそろ二人も準備した方が良いですよ」
声をかけるとレベッタさんが俺を見る。
ガバッと起き上がると目をまん丸と大きくなった。涎が出たのか腕で口を拭い、飛びかかる。
「イケメンーーーーっ!」
抱きしめられた勢いで倒れてしまった。頬をスリスリとこすられる。
ヘイリーさんも来たので助けてくれるのかと思ったが、空いているもう一方の頬を触ってきた。無言でずっと触り続けているから怖い。しかも気づいたらレベッタさんがワイシャツのボタンを外そうとしているし、何を考えているんだッ。
もうすぐで、王族の遣いが……!
「ナイテア王国第一王女であらせられるスカーテ殿下の遣いである。イオディプス様はいらっしゃるか?」
外で女性が大声で叫んでいた。なんてデリカシーのない行動をするんだろう。
ご近所様に王族が興味を持つ人物がいるってバレたじゃないか。
早く黙らせないと! ここに住めなくなるぞ!
「二人ともどいて!」
全力で押しのけてから立ち上がる。また叫ばれた困るので、服は乱れたままだけど急いでドアを開けて出迎えることにした。
「俺がイオディプスです」
「え、あっ…………」
カーキー色の軍服をきた女性が顔を真っ赤にしていた。目線は俺の胸に釘付けだ。気になって下を見る。第三ボタンまで外されていて胸が露わになっていた。
森で生活していたこともあって大胸筋は、しっかりと盛り上がっている。胸についているピンク色のアレは見えていないが、刺激の強い格好なのは間違いないだろう。露出狂の変態男だと勘違いされた困る!
「ごめんなさい」
背を向けて急いでボタンを閉じようとするが、穴に通らない! 焦っているからか、指がうまくうごかないのだ。
視線を感じたので、指を動かしながら顔を上げる。
「…………」
レベッタさん、ヘイリーさんが俺の胸を凝視していた。一瞬たりとも見逃せない、なんて強い意思を感じる。
好意を持ってくれていることはわかっているし、種類は違うが俺だって同様だ。しかしだからといって、何でも許せるわけではない。
エロイ視線で見られてしまうのはちょっと嫌だ。
正直に言えばドン引きである。
「あっちを向いてください」
「…………」
ダメだ。俺の言葉は耳に届いていないようで無視されてしまった。
プレッシャーを感じながらボタンを閉めていく。何度か失敗したけどなんとか終わったので、乱れていた服を直してから振り返り、王女の遣いを見る。
「お待たせしました」
やや頬が赤くなっているけど、表情はキリッとしている。仕事人という感じだ。レベッタさん達と比べて、しっかりしているんだなという印象をもつ。テレシアさんみたいに、仕事の出来るカッコイイ女性みたいだ。
「私は王国騎士のルアンナ。スカーテ王女殿下が屋敷で待っております。お越しいただけないでしょうか?」
王族からの呼び出しだというのに、機嫌を伺うような表情をしながら聞いてきた。
返事をしようと思ったのだが、ルアンナさんはすぐに頭を下げてしまい話しかけるタイミングを失う。
「本来であれば我々がお伺いするべきだとは思いますが、特別扱いしてしまうと普通の男性ではないと気づかれてしまい、よからぬ人たちに狙われてしまうことになります。もちろん。そこら辺の犯罪集団だったらすぐに鎮圧してみましょう。ですが暗殺ギルドや他国の間者だった場合は、イオディプス様が傷つく可能性が出てしまいます。我が国の宝である貴方にそのような危険から遠ざけなければいけません! ですから、その他大勢の男性と同じ扱いをしてしまい大変恐れ入りますが、我々の馬車に乗っていただけないでしょうか! 何卒よろしくお願いいたしますっ!」
俺が普通の男ならここまで下手には出ないはず。スキルランクがSSということまで把握した上での対応だろう。
元から断るつもりはなかったし、ご近所さんが集まってくる前に移動したいので、ルアンナさんの要望を叶えることにした。
「もちろんです。ご案内お願いしますね」
「本当ですかっっ!!」
ルアンナさんはガバッと勢いよく顔を上げた。安心したのか笑顔である。
どうやら王女が来いなんて傲慢な態度を取ると思われていたようだ。
「馬車はこちらです」
手を出されたので何も考えずにつなぐ。
「あ、もう手洗えない……」
思わずといった感じで呟いていた。
真面目な彼女も、この世界の女性なんだなと感じて少し面白い。王女の任務がなかったら、レベッタさんみたいに暴走していたのかな?
賭けはずっと続いていたらしく、テレシアさんは朝方に帰ったとのこと。その際、俺の使っていたコップがなくなったらしいけど、酔っ払って捨てたのか? スペアはいくつかあるので困ることはないが、酒癖は直してもらわらないと困るな。
「おはようございます。いよいよ、今日ですね」
ソファで手足を力なく伸ばし、ぐったりとしている二人に声をかけた。
返事はない。頭を手で押さえて痛みに耐えている。もうすぐスカーテ王女からの遣いがくるはずなんだけど、対応できるのだろうか。
「準備しておきますね」
王族と会うのだから身ぎれいにしなければいけない。部屋に戻ると寝巻きを脱ぎ捨てて、白いワイシャツに黒いジャケットを羽織る。下も黒いズボンだ。靴はいつもと違って革靴。歩きにくく窮屈ではあるが、マナーとして必要だと言われれば拒否できない。
いつもは前髪を垂らした髪型なので、ワックスみたいなものでセンター分けに変える。おでこを出したことで少しは大人っぽく見えることだろう。最後に歯磨きをして口内を綺麗にしてから、また二人のところに戻る。変わらずぐったりとしていた。
「そろそろ二人も準備した方が良いですよ」
声をかけるとレベッタさんが俺を見る。
ガバッと起き上がると目をまん丸と大きくなった。涎が出たのか腕で口を拭い、飛びかかる。
「イケメンーーーーっ!」
抱きしめられた勢いで倒れてしまった。頬をスリスリとこすられる。
ヘイリーさんも来たので助けてくれるのかと思ったが、空いているもう一方の頬を触ってきた。無言でずっと触り続けているから怖い。しかも気づいたらレベッタさんがワイシャツのボタンを外そうとしているし、何を考えているんだッ。
もうすぐで、王族の遣いが……!
「ナイテア王国第一王女であらせられるスカーテ殿下の遣いである。イオディプス様はいらっしゃるか?」
外で女性が大声で叫んでいた。なんてデリカシーのない行動をするんだろう。
ご近所様に王族が興味を持つ人物がいるってバレたじゃないか。
早く黙らせないと! ここに住めなくなるぞ!
「二人ともどいて!」
全力で押しのけてから立ち上がる。また叫ばれた困るので、服は乱れたままだけど急いでドアを開けて出迎えることにした。
「俺がイオディプスです」
「え、あっ…………」
カーキー色の軍服をきた女性が顔を真っ赤にしていた。目線は俺の胸に釘付けだ。気になって下を見る。第三ボタンまで外されていて胸が露わになっていた。
森で生活していたこともあって大胸筋は、しっかりと盛り上がっている。胸についているピンク色のアレは見えていないが、刺激の強い格好なのは間違いないだろう。露出狂の変態男だと勘違いされた困る!
「ごめんなさい」
背を向けて急いでボタンを閉じようとするが、穴に通らない! 焦っているからか、指がうまくうごかないのだ。
視線を感じたので、指を動かしながら顔を上げる。
「…………」
レベッタさん、ヘイリーさんが俺の胸を凝視していた。一瞬たりとも見逃せない、なんて強い意思を感じる。
好意を持ってくれていることはわかっているし、種類は違うが俺だって同様だ。しかしだからといって、何でも許せるわけではない。
エロイ視線で見られてしまうのはちょっと嫌だ。
正直に言えばドン引きである。
「あっちを向いてください」
「…………」
ダメだ。俺の言葉は耳に届いていないようで無視されてしまった。
プレッシャーを感じながらボタンを閉めていく。何度か失敗したけどなんとか終わったので、乱れていた服を直してから振り返り、王女の遣いを見る。
「お待たせしました」
やや頬が赤くなっているけど、表情はキリッとしている。仕事人という感じだ。レベッタさん達と比べて、しっかりしているんだなという印象をもつ。テレシアさんみたいに、仕事の出来るカッコイイ女性みたいだ。
「私は王国騎士のルアンナ。スカーテ王女殿下が屋敷で待っております。お越しいただけないでしょうか?」
王族からの呼び出しだというのに、機嫌を伺うような表情をしながら聞いてきた。
返事をしようと思ったのだが、ルアンナさんはすぐに頭を下げてしまい話しかけるタイミングを失う。
「本来であれば我々がお伺いするべきだとは思いますが、特別扱いしてしまうと普通の男性ではないと気づかれてしまい、よからぬ人たちに狙われてしまうことになります。もちろん。そこら辺の犯罪集団だったらすぐに鎮圧してみましょう。ですが暗殺ギルドや他国の間者だった場合は、イオディプス様が傷つく可能性が出てしまいます。我が国の宝である貴方にそのような危険から遠ざけなければいけません! ですから、その他大勢の男性と同じ扱いをしてしまい大変恐れ入りますが、我々の馬車に乗っていただけないでしょうか! 何卒よろしくお願いいたしますっ!」
俺が普通の男ならここまで下手には出ないはず。スキルランクがSSということまで把握した上での対応だろう。
元から断るつもりはなかったし、ご近所さんが集まってくる前に移動したいので、ルアンナさんの要望を叶えることにした。
「もちろんです。ご案内お願いしますね」
「本当ですかっっ!!」
ルアンナさんはガバッと勢いよく顔を上げた。安心したのか笑顔である。
どうやら王女が来いなんて傲慢な態度を取ると思われていたようだ。
「馬車はこちらです」
手を出されたので何も考えずにつなぐ。
「あ、もう手洗えない……」
思わずといった感じで呟いていた。
真面目な彼女も、この世界の女性なんだなと感じて少し面白い。王女の任務がなかったら、レベッタさんみたいに暴走していたのかな?