「どういうことですか?」
「スキルランクがSSの男性は建国してから出てきたことがない。それは知っているな?」
「はい。レベッタさんから聞きました」

 スキルランクSSは世界でも数名しかいない。

 女性でも珍しいのに男性が高ランクスキルを持つなんてありえないというのが、今までの常識だった。

「SSランクは世界を変革できるほどのスキルだと言われている。さらにイオディプス君は男性だ。BやAランク以上の女性との間に子供を作れば、高確率でSランクスキル持ちが生まれる。この意味は分かるか?」

 俺みたいな突然変異はいるので絶対ではないが、父親のランクが高ければ高ランクスキルをもった子供が生まれやすい。

 女性と違って子種をばらまくだけで済む男であれば、Sランクの子供を大量に作ることだって可能だろう。もしかしたらSSランクが生まれるかもしれない。

 Sランクのスキルは国家戦力として重宝されるレベルで一騎当千の猛者となる。そんな人材が数十人いたら戦力は大幅に強化されるだろう。

「軍が強くなりますね」
「世界統一すらできるほどにな」

 俺の下半身で世界が統一できる。

 恐ろしい話だ。

 この事実に気づいた世界中の女性、権力者が狙っている。恐ろしい重圧だ。この体の持ち主が逃げ出した理由もわかる気がする。そういった状況に耐えられなかったんだろうな。

 レベッタさんたちがいなければ、俺だって隠者生活を望んでいただろう。

 世界を変える責任なんて持ちたくないからな。

「だからスカーテ王女は、イオディプス君がどんな条件を出しても受け入れるだろう」
「自由に生活したいと言っても?」
「他国への移動は制限されるだろうが、この町で生活するぐらいなら問題ない」
「子作りも自由ですか? 強制はされません?」

 今すぐとは思わないが、将来を考えれば聞いておいて損はないだろう。

「致した女性を報告する必要はあるだろうが、誰に手を出しても問題はない。いや、むしろ推奨される」

 高ランクのスキル持ちが期待できるからな。当然、期待されるか。

 むしろ子作りしなければ誘惑してくる未来まで見える……悪くはないが、今ではない。その前に自由や安全の確保が優先だからだ。

 スカーテ王女を脅してでも恩人を守るために動く予定である。

「それってイオ君が望めば、この家でのイチャラブ生活が続けられるってことっ!?」
「ああ。間違いない。その程度の要望は容易に叶う」
「やったーーーーーっ!! ずっといっしょだー!」

 恐ろしい雰囲気が一転したレベッタさんは、弓を投げ捨てて抱き付こうとする。

「痛い、痛いってば!!」

 ヘイリーさんに顔をつかまれて止められてしまった。
 涙目になっているが、それがまたアホ可愛い。

「話が脱線する。黙って」

 本気で怒っているのか、ヘイリーさんは片手でレベッタさんを持ち上げる。

 足をバタバタさせて抵抗しているけど、抜け出すのは難しそうだ。

「レベッタは相変わらずだな」
「二人と知り合いなんですか?」
「アイツらはよく問題を起こす。嫌でも覚えるさ」
「あはは……。そういうことですか」

 何度も衛兵のお世話になっているから顔を覚えられたパターンね。プライベートで仲が良いと勘違いしていた。

 店での乱闘騒ぎも、なるべくしてなった気がする。

「話を戻そう。スカーテ王女はイオディプス君をSSスキルランク持ちの男性として尊重してくれるはずだ。逃亡や嘘は状況を悪化させるだけなので、オススメはしない」

 他国に行くぐらいなら殺してしまえ。なんて発想になられても困るから、テレシアさんのアドバイスには従おう。

 素直で好意的な態度を見せつつ譲れない部分は相手に妥協してもらう。そうやってお互いに利益のある形にすれば悪いようにはされない。むしろ外敵から守るために頑張ってくれるはずだ。良い取引ができるだろう。

「わかりました」
「良い子だ」

 俺を褒めてから、テレシアさんは丸まった羊皮紙を取り出した。

「スカーテ王女からの招待状だ。明日、屋敷に来て欲しい」
「一人で、ですか?」
「同行者は許可されている。一人で出歩く男性はいないからな」

 また日本にいたころの感覚でバカな質問をしてしまった。

 男は一人で出歩けない危険な世界だから、同行者はいる前提で考えられているのだ。

 感覚の違いは早くなれなければと思いつつも、難しいとも感じる。数年はこのままな気がするな。

「わかりました。レベッタさん、ヘイリーさんと一緒に行きます」
「私は?」
「へ?」

 何を言ってるんだ。この人は。

 親切にしてくれたことは感謝しているけど、連れて行く理由がない。

「こう見えても男爵家の生まれでマナーはしっかりしているぞ。戦闘能力だって二人より上だ。なにより貴族の常識というのをわかっているので、スカーテ王女にハメられないようアドバイスもできる。どうだ。同行しても損はないだろ?」

 早口でまくしたてられてしまった。

 どや顔をしていて自信がありそうな態度だ。

 男女比が歪な世界における貴族の常識なんてわかるはずがない。テレシアさんの提案は魅力的である。

 だが俺は常識知らずだと理解しているので、一人で決めるようなことはしない。

 じゃれ合っている二人を見た。

「話は聞いてましたよね? テレシアさんの同行について意見をください」
「他の女は邪魔だからなーーーーしっ!」

 レベッタさんが率先して手を挙げたけど、ヘイリーさんに頭を殴られて黙ってしまった。涙目になっている。

「王女が来るなら町の警備で忙しいはず。無理してこなくていい」
「ちっ」

 見間違えかもしれないけが、テレシアさんが舌打ちをした?

 いや。まさかだろ。真面目な彼女が、そんな悪態をつくはずがない。

「わかったよ。今日は引き下がるが、私は君たちを二回助けた。そのことを覚えておいてくれ」

 テレシアさんが言ったのは、牢獄からの釈放と男のクレームをなかったことにしたことだ。

 忘れるはずがない。受けた恩は必ず返すつもりだから。