「ごめん。暴走したのは謝る。けど、よく見て」
「何よ」
「嫌がってない」
怒っているレベッタさんが俺を見た。本当なの? と聞いてくるような目をしている。
恥ずかしいからといって嘘をついたらヘイリーさんに迷惑をかけてしまう。とはいえ、今の下半身の状態は知られたくない。どうしようか……。
「もしかして、それって」
レベッタさんの視線が一点に集中していた。
何を見ているなんてわかる。どうやらバレてしまったようだ。
顔が熱い。なんか変な汗も出てくるし、いますぐ逃げ出したい気持ちになる。
「言ったでしょ?」
勝ち誇ったような顔をしたヘイリーさん。もう逃げ道はない。諦めるしかなさそうだ。
「えーと、嫌ではないですよ?」
俺が言った直後、二人の動きは速かった。
レベッタさんの足が伸びて、ヘイリーさんの腹を蹴る。拘束から解放された俺は抱きかかえられてしまった。壁に叩きつけられたヘイリーさんは立ち上がると、瞳が光っていた。普段とは違う雰囲気をまとっていて、初めて怖いと感じてしまう。
下半身が暴走しかけたせいで、命の危機が訪れているのだ!
「私の男を返せ」
「いやよ。私が最初に見つけたの。スキルを使って脅しても無駄だから」
「共有する話はどうした?」
「するよ。私が終わらせた後でね」
瞳を光らせながら、憤怒の表情をしたヘイリーさんが飛びかかった。
レベッタさんは俺をベッドに投げてから、激しい殴り合いが始まった。
防御なんて考えてないようで、お互いの腹や胸に拳がめり込む。
接近戦を主体にしているヘイリーさんが有利かと思ったけど、狩人であるレベッタさんも負けてはいない。
素人の俺からすると実力は互角のように見える。
「スキルで動体視力を強化して、その程度なの?」
「うるさい」
椅子持つと、ヘイリーさんが振り回した。
壁に当たって木片が飛び散り、ベッドに突き刺さる。俺の部屋がボロボロだ。まだ数日しか住んでないんだけど。
「ねばるな! 早く倒れろっ!」
「うるさい!」
罵り合いながら殴っていると、レベッタさんの攻撃が当たりにくくなってきた。動体視力を強化しているヘイリーさんが、動きになれてきたのかもしれない。もうすぐで争いは終わるだろう。
そして、二人の間にできた溝は深まる。
恩があるのに、見ているだけで良いのか?
いや。ダメだ。この争いは俺が止める。その責任がある!
ベッドの上に立つと二人に向かって飛ぶ。跳躍だ。
「争いはダメ!」
声に気づいて二人とも俺を見る。狙い通り驚いて動きを止めてくれた。
狙い通りだ。何とか仲裁できそうである。
着地して両腕を広げてると、レベッタさんとヘイリーさんの距離を開ける。
「落ち着いて。俺の話を聞いてくれませんか?」
「わかった」
「いいよ。聞いてあげる」
二人から力が抜けたように見えた。よし、第一段階は突破した。
次は説得するぞ。
「俺は二人が好きです」
恋愛というのはよくわからないが、少なくとも人として好意は持っている。
その後の言葉を続けようとしたら、左右から抱きしめられてしまった。幸せな感触を楽しんでいたいけど、それは後にしよう。
「だからケンカしないでください。その、俺のことが、好き、なんでしたら……っ!」
もし違っていたら家出するレベルの恥ずかしさなんだが、考えはあっているはず。
頼むから言うことを聞いてくれ! と願いながら反応を待つ。
「お姉ちゃんもイオ君のこと好きだよ。でもね、それと、今のケンカは関係ないいんだよ。これは女のプライドを賭けた……」
「違います。関係ありますからっ!」
大声でレベッタさんの言葉を遮った。強引にでも、俺のペースに持って行かないと。
「俺は誰の物でもありません。もし、奪い合うような戦いをするのであれば、この家から出て行きます。それでもまだ、女のプライドと言って戦うつもりなんですか?」
流石に今の言葉は効いたみたいだ。二人とも俺から離れると、力が抜けたみたいにペタリと座り込んでしまった。
「お姉ちゃんを置いて出て行くって、嘘だよね?」
レベッタさんは涙を流しながら懇願するような目で俺を見ている。
ものすごい罪悪感を覚える光景だ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
一方のヘイリーさんは、同じ言葉を呟くだけの人になってしまった。目には何も映っていないように見えて、少し怖い。
「皆で仲良く生活。それができるなら、俺はずっとここにいますよ」
同じパーティで活動するほど二人の関係は良好だったんだから、無理やり仲良くなれとは言っていないはず。
落ち着けば、この提案を受けて良かったと思ってくれるだろう。
「わかった。お姉ちゃんは守るよ。守るよ」
「許してくれるなら、何でもする」
よかった。ちゃんとわかってくれた……よね? 大丈夫だよね? もう暴れないよね?
「だったら、仲直りの握手をしようよ」
左手でヘイリーさんを、右手でレベッタさんの手を持つと、近づけて握手をしてもらった。
「さっきは殴ってゴメン。ヘイリーのことは好きだよ」
「私も」
二人とも笑顔だし、しっかり手を握っている。これで一段落付いたと思っていいだろう。
男を取り合う女性なんて空想上の出来事だと思っていたけど、この世界だったら普通なのかもしれない。レベッタさんやヘイリーさんだけじゃなく、まだ会っていない同じパーティの二人にも気をつけて接しよう。
俺も頑張るからさ、みんなで仲良く過ごせると良いな。
「何よ」
「嫌がってない」
怒っているレベッタさんが俺を見た。本当なの? と聞いてくるような目をしている。
恥ずかしいからといって嘘をついたらヘイリーさんに迷惑をかけてしまう。とはいえ、今の下半身の状態は知られたくない。どうしようか……。
「もしかして、それって」
レベッタさんの視線が一点に集中していた。
何を見ているなんてわかる。どうやらバレてしまったようだ。
顔が熱い。なんか変な汗も出てくるし、いますぐ逃げ出したい気持ちになる。
「言ったでしょ?」
勝ち誇ったような顔をしたヘイリーさん。もう逃げ道はない。諦めるしかなさそうだ。
「えーと、嫌ではないですよ?」
俺が言った直後、二人の動きは速かった。
レベッタさんの足が伸びて、ヘイリーさんの腹を蹴る。拘束から解放された俺は抱きかかえられてしまった。壁に叩きつけられたヘイリーさんは立ち上がると、瞳が光っていた。普段とは違う雰囲気をまとっていて、初めて怖いと感じてしまう。
下半身が暴走しかけたせいで、命の危機が訪れているのだ!
「私の男を返せ」
「いやよ。私が最初に見つけたの。スキルを使って脅しても無駄だから」
「共有する話はどうした?」
「するよ。私が終わらせた後でね」
瞳を光らせながら、憤怒の表情をしたヘイリーさんが飛びかかった。
レベッタさんは俺をベッドに投げてから、激しい殴り合いが始まった。
防御なんて考えてないようで、お互いの腹や胸に拳がめり込む。
接近戦を主体にしているヘイリーさんが有利かと思ったけど、狩人であるレベッタさんも負けてはいない。
素人の俺からすると実力は互角のように見える。
「スキルで動体視力を強化して、その程度なの?」
「うるさい」
椅子持つと、ヘイリーさんが振り回した。
壁に当たって木片が飛び散り、ベッドに突き刺さる。俺の部屋がボロボロだ。まだ数日しか住んでないんだけど。
「ねばるな! 早く倒れろっ!」
「うるさい!」
罵り合いながら殴っていると、レベッタさんの攻撃が当たりにくくなってきた。動体視力を強化しているヘイリーさんが、動きになれてきたのかもしれない。もうすぐで争いは終わるだろう。
そして、二人の間にできた溝は深まる。
恩があるのに、見ているだけで良いのか?
いや。ダメだ。この争いは俺が止める。その責任がある!
ベッドの上に立つと二人に向かって飛ぶ。跳躍だ。
「争いはダメ!」
声に気づいて二人とも俺を見る。狙い通り驚いて動きを止めてくれた。
狙い通りだ。何とか仲裁できそうである。
着地して両腕を広げてると、レベッタさんとヘイリーさんの距離を開ける。
「落ち着いて。俺の話を聞いてくれませんか?」
「わかった」
「いいよ。聞いてあげる」
二人から力が抜けたように見えた。よし、第一段階は突破した。
次は説得するぞ。
「俺は二人が好きです」
恋愛というのはよくわからないが、少なくとも人として好意は持っている。
その後の言葉を続けようとしたら、左右から抱きしめられてしまった。幸せな感触を楽しんでいたいけど、それは後にしよう。
「だからケンカしないでください。その、俺のことが、好き、なんでしたら……っ!」
もし違っていたら家出するレベルの恥ずかしさなんだが、考えはあっているはず。
頼むから言うことを聞いてくれ! と願いながら反応を待つ。
「お姉ちゃんもイオ君のこと好きだよ。でもね、それと、今のケンカは関係ないいんだよ。これは女のプライドを賭けた……」
「違います。関係ありますからっ!」
大声でレベッタさんの言葉を遮った。強引にでも、俺のペースに持って行かないと。
「俺は誰の物でもありません。もし、奪い合うような戦いをするのであれば、この家から出て行きます。それでもまだ、女のプライドと言って戦うつもりなんですか?」
流石に今の言葉は効いたみたいだ。二人とも俺から離れると、力が抜けたみたいにペタリと座り込んでしまった。
「お姉ちゃんを置いて出て行くって、嘘だよね?」
レベッタさんは涙を流しながら懇願するような目で俺を見ている。
ものすごい罪悪感を覚える光景だ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
一方のヘイリーさんは、同じ言葉を呟くだけの人になってしまった。目には何も映っていないように見えて、少し怖い。
「皆で仲良く生活。それができるなら、俺はずっとここにいますよ」
同じパーティで活動するほど二人の関係は良好だったんだから、無理やり仲良くなれとは言っていないはず。
落ち着けば、この提案を受けて良かったと思ってくれるだろう。
「わかった。お姉ちゃんは守るよ。守るよ」
「許してくれるなら、何でもする」
よかった。ちゃんとわかってくれた……よね? 大丈夫だよね? もう暴れないよね?
「だったら、仲直りの握手をしようよ」
左手でヘイリーさんを、右手でレベッタさんの手を持つと、近づけて握手をしてもらった。
「さっきは殴ってゴメン。ヘイリーのことは好きだよ」
「私も」
二人とも笑顔だし、しっかり手を握っている。これで一段落付いたと思っていいだろう。
男を取り合う女性なんて空想上の出来事だと思っていたけど、この世界だったら普通なのかもしれない。レベッタさんやヘイリーさんだけじゃなく、まだ会っていない同じパーティの二人にも気をつけて接しよう。
俺も頑張るからさ、みんなで仲良く過ごせると良いな。