「他の仕事はないんですか?」
「ないよ。子作り以外、男に求めるものはないから」
女性と寝るだけのお仕事を羨ましいと思う人もいるだろう。
実際、俺だって少しぐらい興味はある。
だが、仕事が子作りだけというのであれば、話は別だ。ファンタジー世界に来たんだし、俺は別の仕事にチャレンジしたい。
「二人と一緒に冒険者として働きたい。俺のスキルなら役に立つと思うよ」
この体が覚えているスキルは『スキルブースター』だ。ヘイリーさんやレベッタさんのスキルを強化できるので、役には立つはず。
同じパーティに入っても足手まといにはならない。そんな自信があった。
「それはわかる。けど、少し難しい」
「どうして!?」
「貴重な男に危険な仕事をさせる女、世間はどう見る?」
「あっ……」
クズと呼ばれるならまだ良い方だ。種の存続という観点から、人類に対する裏切り行為とだと罵られても不思議ではない。最悪は反逆罪で捕まるとか? どんな結果になるかわからないが、少なくとも周囲からの反発は避けられないだろう。
ヘイリーさんたちは魔物と戦う命がけの仕事をしているので、俺が一緒に行動したいと言ってしまえば、迷惑をかけてしまうのか。
ようやく俺の考えは、養ってくれている二人の評判を下げる行為だとわかった。
窮屈な世界だ。
守られている立場だというのに、そんな想いが湧き上がってしまった。
せっかく人生をリセットしたのだから、もっと自由に生きたい。
そう思うのはワガママなのだろうか。
「一緒に町を歩くのは良いけど、冒険はできない。ごめん」
謝られてしまったけど俺は諦めない。
今は難しいかもしれないが、チャンスを待ち続ける。
「大丈夫です。気にしないでください」
ヘイリーさんの顔は暗いままだ。勉強の続きをして少し空気を変えよう。
「世の男性は何をしているんですか? 話を聞いている限り、なんかすごく暇そうなんですけど」
「昼は人それぞれかな。軽く働く人もいれば、お酒ばかり飲んでいる人もいる」
危険な仕事じゃなければ仕事はして良いのかな?
男がどんな仕事をしているのか知りたい。迷惑をかけないためにも深く聞いておこう。
「普通はどんな仕事をするんですか?」
「それは私もわからない」
「え、そうなんですか」
「だって男と会う機会なんてなかったから」
言われてみれば納得だ。男と一緒にいなければ、何をしているかなんてわからないのだから。
ネットがあれば別かもしれないけど、ここにはないからなぁ。
情報を持っている人は公開しないだろうし、簡単には手に入らないだろう。
「何も知らないなら俺と同じですね。一緒に男のことも勉強しましょう」
共に学んでいけるというのは、出会ったばかりの俺たちにとって良い思い出になるはず。みんなでお仕事をどうするか、なんて話し合う場面を想像しただけで楽しくなる。
一方的に与える関係は長続きしないと聞く。
いつかは一つぐらい、教えられることができるといいな。
「もう、ダメ。我慢できない」
膝の上に座っていたヘイリーさんが、俺のことを抱きしめた。
控えめな胸が頭に当たる。ちょっとだけ息苦しさを感じるけど、良い匂いがして嫌ではない。背中をさすってくれていることもあって、凄く落ち着く。ずっとそのままでいたいぐらいだ。
「あっ」
体重をかけられて、押し倒されてしまった。腕を押さえられてしまい抜け出せない。ヘイリーさんの髪が俺に触れるぐらい近い距離だ。
これって、もしかして、そういうことだろうか!?
いや。勘違いするな。ただの事故だ。男の少ない世界だからといって、友達すらいなかった俺が女性にモテるわけないだろ! なんて言い聞かせても、心のどこかで期待している自分がいる。
「ねえ。こういうの嫌?」
好きですとは恥ずかしくて言えなかった。
その代わり、頑張って大人しくさせていた下半身が元気になっている。正直ものだ。
「嫌じゃないけど……」
「じゃあ、どうなのかな?」
「えーと、それはですね」
言葉に詰まってしまった。
こんなとき、どうすればいいのだ。誰も教えてくれなかったから、正解が分からない。助けを求めるようにして顔を横に向ける。
レベッタさんがいた。
腕を組んで眉をつり上げている。
見ただけで分かる。怒っているのだ。
「スキルランクの高い男性は性欲が少ないから強引に行くなって、ヘイリーが言ってたのに何してるのっっ!!」
え、スキルってそんな影響力もあったの!?
スキルのランクは性欲にも大きく関わってくるのか。遺伝の問題もあるらしいし、高ランクスキルを維持するのは本当に難しそうだ。
高ランクスキルの男を見つけたら、貴族が囲い込むというのもうなずける話である。時間をかけて子作りする計画なのだろう。
スキルランクの高い男たちは性欲が低く、逆に女性は積極的にアピールしてくる。このアンバランスさが、世界の歪さを象徴しているように感じた。
でも、俺の性欲は日本にいたときと変わらない。
イオディプスの下半身は年相応に元気なんだ。
俺が体に憑依した影響だろうか。
「ないよ。子作り以外、男に求めるものはないから」
女性と寝るだけのお仕事を羨ましいと思う人もいるだろう。
実際、俺だって少しぐらい興味はある。
だが、仕事が子作りだけというのであれば、話は別だ。ファンタジー世界に来たんだし、俺は別の仕事にチャレンジしたい。
「二人と一緒に冒険者として働きたい。俺のスキルなら役に立つと思うよ」
この体が覚えているスキルは『スキルブースター』だ。ヘイリーさんやレベッタさんのスキルを強化できるので、役には立つはず。
同じパーティに入っても足手まといにはならない。そんな自信があった。
「それはわかる。けど、少し難しい」
「どうして!?」
「貴重な男に危険な仕事をさせる女、世間はどう見る?」
「あっ……」
クズと呼ばれるならまだ良い方だ。種の存続という観点から、人類に対する裏切り行為とだと罵られても不思議ではない。最悪は反逆罪で捕まるとか? どんな結果になるかわからないが、少なくとも周囲からの反発は避けられないだろう。
ヘイリーさんたちは魔物と戦う命がけの仕事をしているので、俺が一緒に行動したいと言ってしまえば、迷惑をかけてしまうのか。
ようやく俺の考えは、養ってくれている二人の評判を下げる行為だとわかった。
窮屈な世界だ。
守られている立場だというのに、そんな想いが湧き上がってしまった。
せっかく人生をリセットしたのだから、もっと自由に生きたい。
そう思うのはワガママなのだろうか。
「一緒に町を歩くのは良いけど、冒険はできない。ごめん」
謝られてしまったけど俺は諦めない。
今は難しいかもしれないが、チャンスを待ち続ける。
「大丈夫です。気にしないでください」
ヘイリーさんの顔は暗いままだ。勉強の続きをして少し空気を変えよう。
「世の男性は何をしているんですか? 話を聞いている限り、なんかすごく暇そうなんですけど」
「昼は人それぞれかな。軽く働く人もいれば、お酒ばかり飲んでいる人もいる」
危険な仕事じゃなければ仕事はして良いのかな?
男がどんな仕事をしているのか知りたい。迷惑をかけないためにも深く聞いておこう。
「普通はどんな仕事をするんですか?」
「それは私もわからない」
「え、そうなんですか」
「だって男と会う機会なんてなかったから」
言われてみれば納得だ。男と一緒にいなければ、何をしているかなんてわからないのだから。
ネットがあれば別かもしれないけど、ここにはないからなぁ。
情報を持っている人は公開しないだろうし、簡単には手に入らないだろう。
「何も知らないなら俺と同じですね。一緒に男のことも勉強しましょう」
共に学んでいけるというのは、出会ったばかりの俺たちにとって良い思い出になるはず。みんなでお仕事をどうするか、なんて話し合う場面を想像しただけで楽しくなる。
一方的に与える関係は長続きしないと聞く。
いつかは一つぐらい、教えられることができるといいな。
「もう、ダメ。我慢できない」
膝の上に座っていたヘイリーさんが、俺のことを抱きしめた。
控えめな胸が頭に当たる。ちょっとだけ息苦しさを感じるけど、良い匂いがして嫌ではない。背中をさすってくれていることもあって、凄く落ち着く。ずっとそのままでいたいぐらいだ。
「あっ」
体重をかけられて、押し倒されてしまった。腕を押さえられてしまい抜け出せない。ヘイリーさんの髪が俺に触れるぐらい近い距離だ。
これって、もしかして、そういうことだろうか!?
いや。勘違いするな。ただの事故だ。男の少ない世界だからといって、友達すらいなかった俺が女性にモテるわけないだろ! なんて言い聞かせても、心のどこかで期待している自分がいる。
「ねえ。こういうの嫌?」
好きですとは恥ずかしくて言えなかった。
その代わり、頑張って大人しくさせていた下半身が元気になっている。正直ものだ。
「嫌じゃないけど……」
「じゃあ、どうなのかな?」
「えーと、それはですね」
言葉に詰まってしまった。
こんなとき、どうすればいいのだ。誰も教えてくれなかったから、正解が分からない。助けを求めるようにして顔を横に向ける。
レベッタさんがいた。
腕を組んで眉をつり上げている。
見ただけで分かる。怒っているのだ。
「スキルランクの高い男性は性欲が少ないから強引に行くなって、ヘイリーが言ってたのに何してるのっっ!!」
え、スキルってそんな影響力もあったの!?
スキルのランクは性欲にも大きく関わってくるのか。遺伝の問題もあるらしいし、高ランクスキルを維持するのは本当に難しそうだ。
高ランクスキルの男を見つけたら、貴族が囲い込むというのもうなずける話である。時間をかけて子作りする計画なのだろう。
スキルランクの高い男たちは性欲が低く、逆に女性は積極的にアピールしてくる。このアンバランスさが、世界の歪さを象徴しているように感じた。
でも、俺の性欲は日本にいたときと変わらない。
イオディプスの下半身は年相応に元気なんだ。
俺が体に憑依した影響だろうか。