「大丈夫。誰もいなかった」
しばらくしてヘイリーさんが戻ってきた。
ドアを閉めると、さっき座っていた場所に戻る。
「安全は確認できたから、話を再開しようか。他に何が知りたい?」
驚くことが多くて理解が追いついてない。他の質問なんてぶっ飛んでしまってる。
今知りたいことは、ただ一つだけ。
「俺の覚えたスキルが凄いことはわかりました。これからどうすればいいですか?」
安全に生きていくために必要なことを知りたい。本来は自分で考えるべきなんだけど、危険の回避方法なんて思い浮かばない。
助けてくれた二人に頼る。
選択肢は、それしかなかった。
「まず始めにやることは、スキルについて私とレベッタ以外には教えないこと。もし他の人に言いたくなったら相談してね」
SSランクだって自慢し回ったら、すぐに目を付けられてしまう。当然の対応だ。関係ない人には絶対にスキルのことは言わない。
「わかりました」
「いい子だね」
母親のように愛情のこもった声だったように聞こえた。
子供扱いされたかもしれないという苛立ちなんてない。年上に褒められた嬉しさの方が勝つ。今まで気づかなかったけど、甘えるのが大好きらしい。
「他にも守って欲しいことがある」
ヘイリーさんの声は、少し緊張しているようにも聞こえる。
それほど重要なことなんだろう。聞き逃してはいけない。うなずいてから、しっかりと目を見る。ヘイリーさんの頬が少し赤くなったけど、気のせいだろう。
「この家に住む、一人で行動しない、外に出るときは男だとバレないように変装する、何かあったらすぐに私かレベッタに相談、この四つは守れる?」
俺の行動が大きく制限されてしまう内容だ。日本にいた頃なら絶対、断っていただろう。けど、この世界では必要なことだといのは理解している。
貴族に囲われて生きていくなんて嫌だ。
クソ親父と一緒に死んで新しい体を手に入れたんだから、好きな人たちと自由に過ごしたい。この程度の内容であれば受け入れるべきだ。
「大丈夫です。ちゃんと約束は守ります」
「本当?」
「本当です」
また頭を撫でられてしまった。ヘイリーさんは嬉しそうにしている。
後ろから抱きしめてくれているレベッタさんは、俺のことを優しく包み込むように腕を回しているし、なんて幸せな空間なんだろう。
だからこそ、さっきの約束で気になることがあった。
「俺がこの家に寝泊まりしても大丈夫なんですか?」
さらっと、この家に住むと言っていたけど、話はそう簡単には進まないと思っている。
部屋や家具、お風呂など、色々な問題があるからだ。
「もちろん! 部屋は二つも空いているし、他の仲間だって絶対に歓迎するから! もちろんタダだから安心して!」
「他ににもこの家に住んでいる人いるんですか?」
そういえばレベッタさんはパーティで購入した家と言っていた。てっきり仲間はヘイリーさんだけだと思っていたけど、違ったみたい。
話したこともない人と暮らせるだろうか。不安になってしまう。
「あと二人ほど。実は種族は人間じゃなくて、ドワーフと龍人なんだ。イオディプス君は、どう思う?」
「どうって、仲良くできるかなって不安があるぐらいです」
「それだけ?」
「はい」
返事を聞いたヘイリーさんは黙ってしまった。
どうすれば良いかわからず顔を上げてレベッタさんを見ると、覗き込むように俺を見て微笑んでくれた。
「イオディプス君は優しい子だね。お姉さんは大好きだよ」
「あはは……」
好意をまっすぐ向けられたことなんて、母さん以外にはなかった。非常に照れくさい。
「ここに居ない二人は街の外にでていて、しばらく帰って来ない予定だから。この話は後にしましょっ」
レベッタさん手が俺の脇の下に移動すると、軽々と持ち上げてしまった。
ソファから移動して階段をのぼり、二階に着く。
細い廊下があって左右に六つのドアがあった。
「二階は個人の寝室になっていて、手前にある二つが空室なんだよ。どっちに住む?」
「左側の方でお願いします」
タダで住まわせてもらえるんだから、細かいことを言うつもりはない。
どっちでもよかったので利き腕と同じ方を選んだ。
「案内するね」
俺を右脇に抱えると、レベッタさんがドアを開けた。
室内は広い。着替えに入った部屋とデザインは似ていて、三人は寝られそうなベッドがある。
ベージュ色のシーツを使っているようだ。上には四角く畳んでいる布があり、掛け布団のようだ。薄そうなので暖房性は低そうである。
他にも木製のテーブルがあって、燭台やろうそくもある。椅子は三脚ほどあるので、来客があっても問題なさそうだ。
「新しいメンバーがいつ入ってきても大丈夫なように、一通りの家具は揃えていたんだ」
ようやくレベッタさんは俺をおろしてくれた。
自らの足で歩き、部屋を探索してみる。
奥にある扉を開いたらクローゼットだった。服は掛かっていない。
レンガの壁を叩いてみると思い音が返ってきた。多少、大きな音を出しても隣には聞こえないと思う。プライバシーに配慮した設計だ。
床に使っている板を踏んでも軋むような音はしないし、頑丈な作りをしているんだなと感じた。
「気に入ってくれた?」
「もちろんです。本当にタダで使っても良いんですか?」
「こう見えても、私たちお金持ちだからね。安心して良いよ」
「ありがとうございます」
クソ親父を殺して、よくわからない世界にたどり着いた俺は、なんとか安心出来る場所を確保できたようだった。
しばらくしてヘイリーさんが戻ってきた。
ドアを閉めると、さっき座っていた場所に戻る。
「安全は確認できたから、話を再開しようか。他に何が知りたい?」
驚くことが多くて理解が追いついてない。他の質問なんてぶっ飛んでしまってる。
今知りたいことは、ただ一つだけ。
「俺の覚えたスキルが凄いことはわかりました。これからどうすればいいですか?」
安全に生きていくために必要なことを知りたい。本来は自分で考えるべきなんだけど、危険の回避方法なんて思い浮かばない。
助けてくれた二人に頼る。
選択肢は、それしかなかった。
「まず始めにやることは、スキルについて私とレベッタ以外には教えないこと。もし他の人に言いたくなったら相談してね」
SSランクだって自慢し回ったら、すぐに目を付けられてしまう。当然の対応だ。関係ない人には絶対にスキルのことは言わない。
「わかりました」
「いい子だね」
母親のように愛情のこもった声だったように聞こえた。
子供扱いされたかもしれないという苛立ちなんてない。年上に褒められた嬉しさの方が勝つ。今まで気づかなかったけど、甘えるのが大好きらしい。
「他にも守って欲しいことがある」
ヘイリーさんの声は、少し緊張しているようにも聞こえる。
それほど重要なことなんだろう。聞き逃してはいけない。うなずいてから、しっかりと目を見る。ヘイリーさんの頬が少し赤くなったけど、気のせいだろう。
「この家に住む、一人で行動しない、外に出るときは男だとバレないように変装する、何かあったらすぐに私かレベッタに相談、この四つは守れる?」
俺の行動が大きく制限されてしまう内容だ。日本にいた頃なら絶対、断っていただろう。けど、この世界では必要なことだといのは理解している。
貴族に囲われて生きていくなんて嫌だ。
クソ親父と一緒に死んで新しい体を手に入れたんだから、好きな人たちと自由に過ごしたい。この程度の内容であれば受け入れるべきだ。
「大丈夫です。ちゃんと約束は守ります」
「本当?」
「本当です」
また頭を撫でられてしまった。ヘイリーさんは嬉しそうにしている。
後ろから抱きしめてくれているレベッタさんは、俺のことを優しく包み込むように腕を回しているし、なんて幸せな空間なんだろう。
だからこそ、さっきの約束で気になることがあった。
「俺がこの家に寝泊まりしても大丈夫なんですか?」
さらっと、この家に住むと言っていたけど、話はそう簡単には進まないと思っている。
部屋や家具、お風呂など、色々な問題があるからだ。
「もちろん! 部屋は二つも空いているし、他の仲間だって絶対に歓迎するから! もちろんタダだから安心して!」
「他ににもこの家に住んでいる人いるんですか?」
そういえばレベッタさんはパーティで購入した家と言っていた。てっきり仲間はヘイリーさんだけだと思っていたけど、違ったみたい。
話したこともない人と暮らせるだろうか。不安になってしまう。
「あと二人ほど。実は種族は人間じゃなくて、ドワーフと龍人なんだ。イオディプス君は、どう思う?」
「どうって、仲良くできるかなって不安があるぐらいです」
「それだけ?」
「はい」
返事を聞いたヘイリーさんは黙ってしまった。
どうすれば良いかわからず顔を上げてレベッタさんを見ると、覗き込むように俺を見て微笑んでくれた。
「イオディプス君は優しい子だね。お姉さんは大好きだよ」
「あはは……」
好意をまっすぐ向けられたことなんて、母さん以外にはなかった。非常に照れくさい。
「ここに居ない二人は街の外にでていて、しばらく帰って来ない予定だから。この話は後にしましょっ」
レベッタさん手が俺の脇の下に移動すると、軽々と持ち上げてしまった。
ソファから移動して階段をのぼり、二階に着く。
細い廊下があって左右に六つのドアがあった。
「二階は個人の寝室になっていて、手前にある二つが空室なんだよ。どっちに住む?」
「左側の方でお願いします」
タダで住まわせてもらえるんだから、細かいことを言うつもりはない。
どっちでもよかったので利き腕と同じ方を選んだ。
「案内するね」
俺を右脇に抱えると、レベッタさんがドアを開けた。
室内は広い。着替えに入った部屋とデザインは似ていて、三人は寝られそうなベッドがある。
ベージュ色のシーツを使っているようだ。上には四角く畳んでいる布があり、掛け布団のようだ。薄そうなので暖房性は低そうである。
他にも木製のテーブルがあって、燭台やろうそくもある。椅子は三脚ほどあるので、来客があっても問題なさそうだ。
「新しいメンバーがいつ入ってきても大丈夫なように、一通りの家具は揃えていたんだ」
ようやくレベッタさんは俺をおろしてくれた。
自らの足で歩き、部屋を探索してみる。
奥にある扉を開いたらクローゼットだった。服は掛かっていない。
レンガの壁を叩いてみると思い音が返ってきた。多少、大きな音を出しても隣には聞こえないと思う。プライバシーに配慮した設計だ。
床に使っている板を踏んでも軋むような音はしないし、頑丈な作りをしているんだなと感じた。
「気に入ってくれた?」
「もちろんです。本当にタダで使っても良いんですか?」
「こう見えても、私たちお金持ちだからね。安心して良いよ」
「ありがとうございます」
クソ親父を殺して、よくわからない世界にたどり着いた俺は、なんとか安心出来る場所を確保できたようだった。