「おい、ユウリ。シノノメさんが呼んでんぞ」
ユウリが淡い希望を見出した翌日、珍しく先輩が電話をしてきた。
「…オレ、なんもしてない…」
「俺もそれを信じてるけど、シノノメさんに呼び出されるなんて相当なことだろ?いつものとこ、集合な」
「うっす」
ユウリは若干冷や汗をかいていた。
シノノメさんは『気持ちの宅配便』のリーダーみたいな方で、今はもう現役を退いて人間社会でいうところの、会社の会長ポジションにあたる。
先輩とユウリはシノノメさんが苦手だった。
シノノメさんは先輩が「催眠」を使わなかったことから、顔に一生消えない傷を負わせた張本人なのだ。
逆恨みに聞こえるかもしれないが、ユウリはそれを許せなかった。
先輩はその件でシノノメさんに対してトラウマのようなものを持ってしまったようだ。
電話の声はいつも通りだったので、ユウリは少し安心していた。
シノノメさんは朝の十時、あるこじんまりとした神社に行ったら会える。
もしその場に人間が居ても『気持ちの宅配便』だから、姿を見られることもないし、会話を聞かれることもない。
時計を見ると、短針は九を指していた。
天音はいつもと同じ時間に家を出て行った。
制服を着ていたから学校に行ったと思う。
そうであってほしい。
天音の人生をここで終わらせるわけにはいかない。
とりあえずユウリは、シノノメさんとの用事をなるべく早く済ませることを決意した。
天音の最善の選択を見つけるために。
今のユウリはそれしか考えてなかった。
「どーだ、ユウリ。上手くやってるか?」
「俺なりにちゃんと頑張ってますよ!」
「ならいいけどさ」
神社に着くと、そこにはまだ先輩しかいなかった。
「何だろうな、わざわざ呼び出しって」
「そうですよねぇ」
「何かやらかしたか?」
先輩がニヤニヤしながらそう言ってきた。
「失礼な!これでもちゃんとやってますぅ」
「分かってるよ」
その時風が強く吹いて、先輩の男にしては長い髪の毛が靡いて、頬の傷があらわになった。
そして、シノノメさんは現れた。
「上手くやっているかい、問題児たちよ」
「相変わらずですね、シノノメさんは」
敵意むき出しの先輩がシノノメさんに突っかかる。
「そんなことはどうでもいいんじゃ」
シノノメさんは続けた。
「大事な知らせじゃよ」
「何だよ」
ユウリは先輩から「シノノメさんには名前を呼ぶとき以外、敬語じゃなくていいから」と言われている。
ついでに、「あんなクソジジイに敬語使う方が馬鹿だ」とも言っていた。
「ユウリが今回、仕事を遂行することが出来なかったら、ユウリには消えてもらう」
「は?」
「決定事項じゃ。問題児だから、ユウリだから、特別その罰になったんじゃないぞ」
「じゃあ、なんでそうなったんだよ。経緯を教えろよ、経緯を」
「罰の段階は部屋で決まっていくんじゃよ」
「は?」
「お前たちが住んでるところの部屋じゃ。そこに住んでいた歴代の『気持ちの宅配便』の禁忌の累積が今の結果っていうことじゃよ」
「じゃあ、俺があの時禁忌を犯さなかったら、ユウリは…」
「そうじゃな、消えるんじゃなくて、お前のように傷を負っていたな」
先輩はシノノメさんを強く強く睨んでいた。
「なぁに、禁忌を犯す前に催眠を使えばいいだけのことじゃろ」
それだけ言って、またその場に強く風が吹いた。
シノノメさんは居なくなっていった。
残った二人はしばらく黙っていた。
先に口を開いたのは先輩の方だった。
「シノノメさんがわざわざ言いに来るってことは、今回のターゲット、相当厄介な奴なのか?」
「……話…聞いてくれますか?」
ユウリは先輩に全てを話した。
ユウリが淡い希望を見出した翌日、珍しく先輩が電話をしてきた。
「…オレ、なんもしてない…」
「俺もそれを信じてるけど、シノノメさんに呼び出されるなんて相当なことだろ?いつものとこ、集合な」
「うっす」
ユウリは若干冷や汗をかいていた。
シノノメさんは『気持ちの宅配便』のリーダーみたいな方で、今はもう現役を退いて人間社会でいうところの、会社の会長ポジションにあたる。
先輩とユウリはシノノメさんが苦手だった。
シノノメさんは先輩が「催眠」を使わなかったことから、顔に一生消えない傷を負わせた張本人なのだ。
逆恨みに聞こえるかもしれないが、ユウリはそれを許せなかった。
先輩はその件でシノノメさんに対してトラウマのようなものを持ってしまったようだ。
電話の声はいつも通りだったので、ユウリは少し安心していた。
シノノメさんは朝の十時、あるこじんまりとした神社に行ったら会える。
もしその場に人間が居ても『気持ちの宅配便』だから、姿を見られることもないし、会話を聞かれることもない。
時計を見ると、短針は九を指していた。
天音はいつもと同じ時間に家を出て行った。
制服を着ていたから学校に行ったと思う。
そうであってほしい。
天音の人生をここで終わらせるわけにはいかない。
とりあえずユウリは、シノノメさんとの用事をなるべく早く済ませることを決意した。
天音の最善の選択を見つけるために。
今のユウリはそれしか考えてなかった。
「どーだ、ユウリ。上手くやってるか?」
「俺なりにちゃんと頑張ってますよ!」
「ならいいけどさ」
神社に着くと、そこにはまだ先輩しかいなかった。
「何だろうな、わざわざ呼び出しって」
「そうですよねぇ」
「何かやらかしたか?」
先輩がニヤニヤしながらそう言ってきた。
「失礼な!これでもちゃんとやってますぅ」
「分かってるよ」
その時風が強く吹いて、先輩の男にしては長い髪の毛が靡いて、頬の傷があらわになった。
そして、シノノメさんは現れた。
「上手くやっているかい、問題児たちよ」
「相変わらずですね、シノノメさんは」
敵意むき出しの先輩がシノノメさんに突っかかる。
「そんなことはどうでもいいんじゃ」
シノノメさんは続けた。
「大事な知らせじゃよ」
「何だよ」
ユウリは先輩から「シノノメさんには名前を呼ぶとき以外、敬語じゃなくていいから」と言われている。
ついでに、「あんなクソジジイに敬語使う方が馬鹿だ」とも言っていた。
「ユウリが今回、仕事を遂行することが出来なかったら、ユウリには消えてもらう」
「は?」
「決定事項じゃ。問題児だから、ユウリだから、特別その罰になったんじゃないぞ」
「じゃあ、なんでそうなったんだよ。経緯を教えろよ、経緯を」
「罰の段階は部屋で決まっていくんじゃよ」
「は?」
「お前たちが住んでるところの部屋じゃ。そこに住んでいた歴代の『気持ちの宅配便』の禁忌の累積が今の結果っていうことじゃよ」
「じゃあ、俺があの時禁忌を犯さなかったら、ユウリは…」
「そうじゃな、消えるんじゃなくて、お前のように傷を負っていたな」
先輩はシノノメさんを強く強く睨んでいた。
「なぁに、禁忌を犯す前に催眠を使えばいいだけのことじゃろ」
それだけ言って、またその場に強く風が吹いた。
シノノメさんは居なくなっていった。
残った二人はしばらく黙っていた。
先に口を開いたのは先輩の方だった。
「シノノメさんがわざわざ言いに来るってことは、今回のターゲット、相当厄介な奴なのか?」
「……話…聞いてくれますか?」
ユウリは先輩に全てを話した。