「あ、……そ、そうだな、姫に師事してるんなら大会のルールとかぶっ飛ばしだから、ちょっと難しいかも、な……」
黒藤、慌てて前言撤回した。
「んー、でももったいないよなあ……せっかくそこまで強いのを……あ!」
黒藤は独り言をつぶいてから、ぱっと顔を輝かせた。
「作夜見、白の護衛するってのはどうだ?」
「護衛? 無炎と天音がいるぞ?」
「無炎と天音は、対人間には手出しできないだろ? こいつみたいな考えこじらせた奴が白のこと狙ってきたとき、作夜見ならぶっ飛ばせるじゃん」
「……俺もそれなりに武道は心得ている」
「それでもさっき、気づけなかった。俺もだけど」
「………」
黒藤に指摘されて、白桜は言葉を飲み込んだ。
凶刃(きょうじん)に唯一反応したのが冬湖。それは事実だ。
「つっても、作夜見は別の学校だっけ? だからまあずっとは無理っつーか調整するっつーか」
「転校しますわ! わたくし」
冬湖が前のめりに宣言した。
「作夜見の家族も言いくるめてみせますわ! あ、なんだったら婚約者探しに転校することにいたします。お父様対策として。なので御門様、小路様、お二人の人間側の護りとして、どうぞお認めください」
「え、俺も?」
「はい! 御門様だけというのはわたくしの中で腑に落ちませんの。決して御門様と小路様の邪魔は致しません。やばいときだけ飛び出しますわ」
そうそうやばい事態になっても困りものなのだが。
冬湖が真剣に言っているのは、その表情と熱意からわかる。
「……なら、転校の件は俺からの要請としておこうか」
「いいのか?」
白桜の言葉に、黒藤が返した。
「もともと冬湖を匿っているんだ。そのくらい」
「それはいけませんわ、御門様」
白桜と黒藤が受け入れ態勢だったところへ、冬湖が言葉を差し込んだ。
厳しい面持ちで続ける。