「はいはい。じゃあ種明かしだ。一葉はお前たちのために俺の従妹を襲った。小路が始祖の転生の力を得て、お前たちを立て直すために」

立て直す? 白桜は黙って黒藤の『種明かし』を聞くことにした。

一葉の烏天狗は、覚醒前の真紅を襲い、殺しかけている。

それを知った黒藤は、一葉の烏天狗をシメるのついでに使役に下した。

白桜は一葉の烏天狗とは面識はなく、黒藤も彼らを白桜に会わせたことはなかった。

だからその、種明かしとやらは白桜に対しても有効である。

『一葉が……? 我らのため……?』

「そうらしいぞ。俺が聞いた話ではな。だが、結果的には俺の怒りを買うだけに終わった。あいつら、俺が使役にくだしても随分反抗的な態度取ってやがる。――だが、わけありだとて、俺の一族の者を襲った事実は変わりない。またそんなことされちゃ困るから、一葉を使役から外すわけにもいかんのよ」

朗々と説明する黒藤。白桜は初めて知る内容に、そうだったのかー、と納得した。

意気揚々と黒藤の使役にくだったわけではないだろうな、とは思っていたが。

「どうする? 一葉と血で血を洗う全面戦争をするか? 俺はそれでもかまわない」

「………」

白桜、片手で顔を覆った。だからどうしてお前はすぐに悪役ぶりたがるんだ。

かといって、白桜にも最善の策はあるが、それは良作と言えるかはわらかない。

白桜が考えられる中で最も善(よ)いというだけだ。

「――双葉の烏天狗」

白桜の声に、苛立った顔を向ける交渉の烏天狗。

「俺は小路とは違う流派の人間だから、一葉どうのには手出し口出しは出来ない。だが、あなたたちが共にある道はひとつある」

あなたたち、と、白桜は呼び方を変えた。

『……何と申す』

白桜、渾身(こんしん)のにっこり顔をした。

「あなたたちも黒の配下になればいい」