「現状貴殿らに問えるのは、時空の妖異から霊力を奪ったことだけか……。まあ、一葉を取り戻すためにこれほどの人員を率いてくるんだ。俺がその人の子だと思って交渉ではなく攻撃してくるつもりだったのだろう。その際に一般人に危害が出ないと断言はできない。それを鑑みて、貴殿らにはそれ相応の対応を取らせてもらう」

『……ならば……ぬしを始末して我らは一葉を取り戻す……!』

妖気が肌を突き刺す。

白桜たちを――御門をつぶしてその上を歩いてでも、一葉のもとへ行こうという思いが伝わってくる。

そんな緊迫のさなか――

「よー、なんか楽しいことになってるな」

「なんだ、来たのか」

双葉の烏天狗たちが翼を開いたとき、気の抜けた声が割って入った。

無月を従えた黒藤だった。

白桜も天音もその登場に驚きはしないが、華樹と結蓮はびくっと肩を震わせた。

白桜は黒藤をにらみつける。

「お前がカタつける話だぞ」

「うん、そうみたいだなー」

白桜の苦情も黒藤は笑って流す。とても軽い話のように。

すっと、右手を差し出すように突き出す黒藤。

「双葉の烏天狗。白はああ言ったが、お前たちが白たち御門を害するなら――俺は主人として、一葉に一斉攻撃を命ずる。もちろん相手はお前たちだ」

にやっと笑う黒藤を見て、双葉の烏天狗は息を呑んだ。

『かような……! 鬼か貴様は!』

「わりーがこの世界、優しさだけじゃやっていけねえんだよ。俺は一葉をお前たちに返す気はない」

黒藤の悪役ぶりを見た白桜は『あーあ。すぐに悪役ぶりたがるんだからなあ』と、内心呆れていた。

しかし悪役みたいなニヤ面はよく似合う。

「っつーかお前ら、一葉が俺のところにくだった理由は知ってんの?」

『………』

「対なのに? 知らなかったの? 対なのに~?」

「黒、ちょっと今はふざけないでくれ」

にやにやしながら双葉の烏天狗を見やる黒藤に、白桜はまた苦情を言う。

白桜に文句を言われた不満げな顔で手を振った。