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「………」
「黒藤、起きられるか。黒藤」
「う……」
体を揺すられ、黒藤はようやっと瞼をあげた。
「むつき……?」
黒藤を心配そうに見てくるのは、やはり無月だ。
「どこか打ったか? 痛むところは」
「ん……大丈夫だ、問題ない……白桜は?」
「隣だ。まだ目は覚まさない」
無月に示されて、自分の隣を見る。仰臥(ぎょうが)した白桜がいた。
「白桜!」
慌てて呼びかけると、うう、とうめく声。
「にい、さま……?」
「白桜、大丈夫か? 痛いとこはないか?」
黒藤がさきほどの無月と同じことを口にしていた。
白桜はゆっくりと体を起こして、目をぱちぱちさせた。
「だいじょうぶです……にいさま? ここは……」
「え?」
白桜に言われて辺りを見回せば、そこは御門別邸の庭ではなかった。
「……無月、俺たちをどこかへ連れてきたか?」
「いや、あの閃光のあと、俺も気づけばここにいた。お前たちが伏している以外、俺にもわかることはなかった」
「………」
「………」
無月の淡々とした説明を聞いて、白桜の瞳が揺れた。
安心してほしくて、黒藤はその手を握る。
たった一歳とはいえ、黒藤の方が年上。
その責任感が、黒藤の心がくじけるのをすくってくれた。
白桜が心細くなっているときに、自分まで取り乱すわけにはいかない。