上段の枝にたどりつくと、三毛猫が黒藤の方を見た。
まだ子猫といった大きさだ。白桜、よく見つけたな。
「おいで――って、え」
呼んだ瞬間、三毛猫が黒藤の方に飛び込んできた。いや、人馴れしすぎてないか――うわ!?
三毛猫が飛び込んできた衝撃で黒藤の足場がふらついた。そしてそのまま真っ逆さまに落ちてしまった。
「にいさま!」
白桜の声が耳に響いて、しかし体に受けたのは衝撃ではなく、いつも黒藤を護ってくれる霊力。
つぶってしまった目を開けると、無月がため息をつきつつ黒藤をその腕に抱きとめてくれていた。
「あ、ありがとう、無月」
「……無茶をするなと言っただろう」
「ごめんごめん。白桜、ほら」
地面におろしてくれた無月に礼を言って、抱いたままの子猫を白桜に見せる。
青ざめていた白桜の目がまたキラキラした。
「ぼ、ぼくがさわってもよいのですかっ?」
「うん、抱っこしてあげな」
「はいっ」
おとなしくなった三毛猫を、白桜に渡す。
白桜の手が三毛猫に触れた瞬間――黒藤たちの手から光がほとばしり、あたりが真っ白になった。
「白桜!?」
「にいさま!」
視界すべてが真っ白の中、叫ぶと遠くに白桜に声が聞こえた。
直後、今度は黒藤の意識が暗転した。