「……へ?」

「外を見て回るのは、いいな」

「………」

は、

「白がデレた――――――――――!!!」

「うわっ、なんだよいきなり」

「は、は、は!」

「……通報するか? 警察」

「ごめんなさい! だ、だって、白が……!」

「言っておくが、『一人で』って言ったからな?」

「白がデレ……え?」

「一人で」

「俺が一緒だと?」

「二人になるから、違うな」

真面目な顔で告げる白桜に、黒藤は三秒ほど止まった。

「うわーん! 白のいけずー!」

だっと、泣き言を言いながら駆けだした。もちろん黒藤を追ってくれるような白桜じゃない。すき。

「あー、哀し」

渡り廊下まで出た黒藤は、走っていた足を停めた。

まったく白桜は優しい。

優しいからこそ、黒藤に希望を与えない。

現時点で希望を持つことを許されたのは、白桜ではなく黒藤だから。

白桜が当主を襲名したとき、白里は当時とって五十五歳。引退するには若すぎる年齢だ。

霊力が衰えたから後継に早めに譲った、なんて理由でもないよう。

――白桜を御門に繋ぎ止めておくため。