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「俺が逢いたい人、ですか?」
「うん。涙雨を助けてくれた礼、何がいいかなって。縁が自分も礼したいけど、そういうのしかできないって言われて。華樹に訊いといてくれって言われたんだ」
「俺ですか……家族には京都に行けば逢えますし、離れた学友はいますが、帰郷したついでとかに逢っていますから特別逢いたい人とかは……」
華樹、牡丹、結蓮の三人は、それぞれ初等部や中等部の途中で斎陵学園に転校している。
白桜に呼ばれて東京の御門別邸で過ごすことになったからだ。
実家が京都なのは白桜と華樹で、結蓮たちは斎陵学園への転校組だが、関東の出身だ。
今朝は華樹が登校しているのを見つけた黒藤が駆け寄って、びくびくする華樹と一緒に学校へ向かっているところだった。
「そっかー。なら無理にってことも出来ないな……」
「あ、逢いたい人、というか、逢ってみたかった方ならいます」
「お? 誰?」
「幼い頃の白桜様です」



