肌寒い。
 頬に何か当たっている。
 鼻がくすぐったい。土の香りがする。

 「んっ、んっんー、ふわぁぁぁ。今何時だ?」

 半分寝ぼけたまま起き上がる。目を擦っていると少しずつ意識が戻ってきた。
 意識が戻ると目の前には木があった。顔の目の前に。

 「はあ⁉」

 びっくりしながらも辺りを見渡すと一面、木しか無かった。

 「これは・・・・・・夢だな。夢にしては、感覚が鋭くなっているが。」

 何となく、頬を抓ってみる。

 「痛い・・・。夢であってほしかった・・・。」

 どうやら現実らしい。まだ完全には理解出来てはいないがな。

 「何か、こんな感じの話聞いたことがあるような・・。あっ!!!あいつが言ってたやつだ!!えーと、異世界転移モノ?マジかー。」

 確か、会社の同僚に『なろう系』の小説を書いているやつが居ることを思い出した。
 毎日毎日『異世界転移してぇ!!』とか『転生してモテたい!!』とかよくわからない事を言っていた。その時、異世界モノの王道として教えて貰った物の中に、似たような状況があったことを思い出した。

 「でも、神様みたいな奴に会って無いよな?特にチート?みたいな物も貰って無いし。これで日本の何処かだったら、恥ずかしすぎるだろ・・。」

 頭の中でぐるぐる考えていたら、後ろの茂みから何か飛び出してきた。
 咄嗟に木に隠れると、飛び出してきたものに注意を向ける。
 後ろ姿からしてウサギのようだ。ウサギが顔を横に向けた時、信じられない物が見えた。

 「マジかよ・・。ウサギに角が生えてやがる!しかも《《二本》》も。」

 取り敢えず、ここは異世界らしい。
 確か、同僚が言っていた作品の中には、ホーンラビットという魔物が登場したはずだ。ただ、そいつの角は一本だった。二本なんて聞いてないぞ。

 「こりゃあ、全部が全部ライトノベルのような感じには、いかないっぽいな。そうだ!!異世界モノの常識と言えば!ステータス!!」


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 名前 マサーシー
 年齢 21歳

職業 太古の召喚術士 Level 1

身体Level 1

 体力  100
 魔力  100
 運   10

スキル:『ダイナソー』『恐竜図鑑』『ショップ』『鑑定』

称号:『Dinosaur King』『自称 恐竜博士』『お前の女は俺の物』


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 「本当に出ちゃったよ・・。」

 目の前に浮かぶ、青白い画面を見る。
 色々、気になる部分があるけれど、まずは。


 「『お前の女は俺の物』ってなんなんだ!!!」