人の話し声が聞こえる、生活音か聞こえる、それをかき消すように彼の喚き声が私の背中に畳みかける。

ああーまた、1人、ハンターの餌食になってしまった。これで何人目だろうか?数えてもきりがない。

それよりも、息が切れてきた。一応、追ってきてる者がいないか確かめるため振り返ったがもちろん誰もいない。

私は、人が死んだと、思わないほど足取り軽く本屋に運んだ。これが、いつしか、お決まりになっていたからだ。

だが、今日は一味違かった。本屋に、行く途中に一人の男に話しかけられた。

その男はどうやら、警察らしく、この辺で不審者情報の通報があったから、気を付けてということらしい。

まさか、ハンターがへまをしたわけではなさそうだがやはり心配だ。私は海の方を向きハンターがいないか、確認したがやはりへまはしなかったらしく、人影の姿はなかった。

「あのー大丈夫ですか?」声がした方を見上げると、さっきの警察の男がいた。

この状況を理解できず、少しの間固まったが、手に痛さを感じ、見ると血が出ていた。どうやら、男にぶつかり、転んでしまったようだ。

私は、一言礼を言って男が差し出した手を取り、立ち上がった。男の手は場数を踏んだ軍師上がりの手だった。多分、いや、相当やる。

私は、再度礼を言い本屋に足を運んだ。本屋では、新聞を一枚買った。記事の大見出しは、「またもや、男子高校生連続殺人事件発生!!」という、物騒な見出しだった。

次の日、学校に行くといつも騒がしい教室が静まり返っていた。その理由は、担任のさっちゃんこと、佐田 実《さだ みのる》の第一声でわっかた。その一声はこうだ 

「残念なお知らせがある。仲間の一人、平木 光が亡くなった。」  

瞬間、静粛が泣き声や、わめき声に変わった。それもそうだ、平木といえばいつもみんなの人気者だからだ。

私は、この死を知っていた。だから、悲しくも、何もない。いやそれは違うかもしれない。別に、知っていても、しらなっかったとしても、泣いたり、わめいたりしない。

ただ、一人いなくなったと、思うだけかもしれない。そんな、私を人々は、薄情者や、冷徹者などと、突き放す。実の親もそうだった。

だが、あまり私は気にしない。そう私を突き飛ばしたもの・蔑んだものはこの世から一人ひとりと姿を消すのだから。そして、過ごしやすく世の中は姿を変えていく。今までそうしてきたかのように...

私は、皆が悲鳴を上げる中一人、物思いにふけていた。この光景を見て、頭に浮かぶのは初めてハンターが姿を現した時だ。ハンターが姿を現したのは私が8歳の時だった。

その日は、珍しく海が荒れていた。私の心を表すかこのように。今でも忘れらない、あの時の絶望と、憎しみ。ことの発端は両親の喧嘩だった。

内容は詳しく覚えていないが、確か父親の酒癖の悪さだった気がする。母親の堪忍袋の緒が切れたようだった。そこから、お互いの我慢していたことの言い合いになり、離婚に至った。

私は、もともと口数が少なく表情が乏しかった。大好きなおばあちゃんが死んだときも、眉一つ動かさなかった。そんな私を両親は薄気味だった。

そして、離婚を機に二人とも私を手放した。なんとなく、幼いながらに予想はついていた。そんなに、絶望感はなくただただ両親を軽蔑した。

私は、大企業の幹部である叔父の家に転がり込んだ。それからは、両親からもらえなっか愛情に玩具、沢山のものをもらった。そんな幸せな日が、1か月たったころ叔父と喧嘩をしてしまった。

確か、しょうもないことだった。怒った叔私を自室に呼び出した。そして、殴った。私がいくら謝っても叔父の手は止まらなかった。あの時の痛み、そして大きな絶望を私は忘れない。

それからは、警察に助けを求めるものの、権力で事はうやむやにされてしまった。それからは大人に助けを求めるのをやめた。叔父に抗うのをやめた。生きる意味を見失った。

自殺未遂を繰り返した。でも死ぬ勇気はなかった。そんな絶望の時に現れたのが、ハンターだった。見た目は人間の形をしていているのに黒い靄みたいだった。

一瞬恐怖でひるんでしまったけど、直感的に分かった。彼が、この恐怖から救い出してくれるんだと。そして、契約を交わした。私の憎しみの感情をささげる代わりに、望んだ人間を殺してもらう

初めのターゲットはおじさん夫妻にした。

「安藤さん?」私は名前を呼ばれたこと気が付き、我に返った。授業が始まり、名前を呼ばれていた。皆は、クラスメートが一人いなくなりショックを受けている。授業に集中しているようすはない。内心には響かないはずだ。心の中で、ガッツポーズを決める。