次の日の化学は、6時間目だった。


席に着くやいなや
ノートを開きたい衝動に駆られたけれど



だめだめ。



授業が始まって
みんながだんだん睡眠学習に入ってくるとこで開かないと
バレちゃうかもしれない。


そしてある程度
無機化学を頑張ったあとで



私はそっと
ノートを引っ張り出した。



開くとそこには五行目の端正な文字。


『苦手です。
計算の方がまだいい。
数学とかさ』



あ、少し砕けた口調。



綺麗な字に
少しばかり不釣合いなその文章は



私の心をさわさわと揺らすには十分だった。



『数学ですか。
私は暗記科目の方が好きです。
数学は微分積分からさっぱりで』



少し長めの文章を綴る。



そしてノートを元の位置に戻してから
ふと、不安になる。



長い文章だと、
なんだコイツって思われちゃうかな。



ちょっと会話したくらいで
調子乗って長文書いちゃうって
どうなんだろう……。