急いで私は筆箱から
シャーペンを取り出して



その二行下に
シャーペンをおろす



そこで
はた、と気付く。



どうしよう…
何を書けば良い?



そこでふいに
一際声を大にした先生の一言が耳に飛び込んでくる。



「いいかー!!
無機化学の分野は暗記だからな!!
計算苦手なやつはここで挽回しろよー」



―――暗記。



『暗記が苦手なんですか?』



ゆっくりとペンを走らせる。



よし、これでいい。



ぱた、とノートを閉じて
また机の下に入れる。



どうしよう、
また顔がにやけちゃう。



まさか返事がくるなんて
思ってもみなかった。



………ちがうな。



本当は来たら良いなって、心のどこかで願ってた。



だってこんな秘密のやりとり、
どうしようもなく
ドキドキするシチュエーションじゃない?



ふふふ、と一人にやけて
ようやく私は教科書を開く。



暗記は得意だ。



無機化学だけは頑張ってみようかな、
なんて、不覚にも力が入ってしまうのだった。