先生のか細い声がすきま風と共に
私の耳を通り越してゆく


……化学だけ、移動教室だもんなぁ。


化学室特有の黒い大きな実験机が
この時間の私の居場所。



他の子たちは4人で一つの黒机に座るものの、
名簿順で座ると人数的に余った私だけが一人でこの大きな机を占領している。



話すひとのいないことも、化学をますます退屈にさせる一つの要因だった。



なーんか、超ヒマ……



何の気なしに机の下に備え付けられてる棚をまさぐる。



………あれ?



何かうすいものが
私の左手の小指に触れた。