「……え?」
時間をカウントする表示に切り替わった瞬間、僕の思考は停止する。
数字が5を表示したあたりで、それが大友さんとの会話の時間を表していることにようやく気が付いた。相変わらず大友さんは行動が読めない。
「大友さん」
『……蒼さん』
憔悴しきった声が僕の名前を呼ぶ。それからしばらくの間、また沈黙の時間が続く。
突然行方を眩ませ、挙げ句の果てに病院に担ぎ込まれた。そういう身勝手な行いに腹が立ったのも間違いない。
だから第一声からそういう感情をぶつけた言葉を発する権利はあったと思う。無論、そんなことはしない。できない。
もちろん今の大友さんは、身も心も弱っているから。いや、本当は、彼女の声を聞いた瞬間、本能的に彼女と距離を取ろうとしたからだった。
『お店、なくなるんですよね。あたし……これからどうすればいいんですか』
「お金が必要だったらまた働き先を探せばいい」
そういうことじゃない。でも僕は、彼女の正面に立つことすらできない。
大友さんは続ける。
『あのお店、好きだったのに。一緒に働く人も、お客さんも、みんな大好きだったのに……なんでみんないなくなっちゃうの……』
彼女は今まさに耐え難い痛みを伴っているに違いない。
そんな彼女にかける言葉が見つからない。
あの時田中さんを見放したように、これ以上は関わってはいけないと本能的に拒絶しようとする。
『あたしが好きな人、みんな居なくなっちゃうんです。お母さんもお父さんも、友達も、みんな。お店だってそう。大事だったのに』
僕は大友さんの嗚咽を聞きながら、胸を痛めることくらいしかできなかった。
言葉を探していると、大友さんは2回『ごめんなさい』と言ってから、一方的に通話を終了させた。
時間をカウントする表示に切り替わった瞬間、僕の思考は停止する。
数字が5を表示したあたりで、それが大友さんとの会話の時間を表していることにようやく気が付いた。相変わらず大友さんは行動が読めない。
「大友さん」
『……蒼さん』
憔悴しきった声が僕の名前を呼ぶ。それからしばらくの間、また沈黙の時間が続く。
突然行方を眩ませ、挙げ句の果てに病院に担ぎ込まれた。そういう身勝手な行いに腹が立ったのも間違いない。
だから第一声からそういう感情をぶつけた言葉を発する権利はあったと思う。無論、そんなことはしない。できない。
もちろん今の大友さんは、身も心も弱っているから。いや、本当は、彼女の声を聞いた瞬間、本能的に彼女と距離を取ろうとしたからだった。
『お店、なくなるんですよね。あたし……これからどうすればいいんですか』
「お金が必要だったらまた働き先を探せばいい」
そういうことじゃない。でも僕は、彼女の正面に立つことすらできない。
大友さんは続ける。
『あのお店、好きだったのに。一緒に働く人も、お客さんも、みんな大好きだったのに……なんでみんないなくなっちゃうの……』
彼女は今まさに耐え難い痛みを伴っているに違いない。
そんな彼女にかける言葉が見つからない。
あの時田中さんを見放したように、これ以上は関わってはいけないと本能的に拒絶しようとする。
『あたしが好きな人、みんな居なくなっちゃうんです。お母さんもお父さんも、友達も、みんな。お店だってそう。大事だったのに』
僕は大友さんの嗚咽を聞きながら、胸を痛めることくらいしかできなかった。
言葉を探していると、大友さんは2回『ごめんなさい』と言ってから、一方的に通話を終了させた。