気が付くと、3日に1度は田中さんの部屋に訪れるようになっていた。

以前訪れた時に部屋にあったゲームや漫画に興味を示したら、彼女の方からいつでも来ていいと誘われた。

勤務を終えて自分の部屋に帰る前に、近所のスーパーで買ってきた惣菜を持って彼女の部屋に訪れ、気になったゲームをしたり、漫画を読んだりして時間を溶かす。

そして夜9時のライブ配信が始まる前に、読み進めている途中の漫画を何冊か借りて自分の部屋に戻る。

夕飯は割り勘ということにしていたが、外に出ない彼女の代わりに買い出しに行くのは、僕の役割になっていた。

少しでも費用を抑えるためにと、スーパーのお惣菜売り場の半額セールの時間帯を狙って買い物を済ます。

1週間ごとに勤務時間が変わる交代制であるため、たまに半額セールのシールが貼られる夜8時に間に合わない時があるが、そんな時は夕飯代が高くつくから、なるべく僕が払うようにしている。

彼女は一応休業手当を受け取っているものの、手当無し基本給の2割減という生活に必要な最低限の金額であるため、決して余裕があるわけではない。

おまけに彼女は趣味に関しては出し惜しみをしない性格だった。

部屋に訪れて間もない頃は、カップ麺だけで栄養を賄おうとしていた彼女を見かねて、すぐに自分の部屋から炊飯器を持ってきて、まず米を炊くことを覚えさせた。

学生時代こそ万能人間のように見たが、どうやらそれは僕が勝手に作り上げた虚像(きょぞう)だったようだ。