自分の部屋に帰って教えてもらった動画のアカウント名を検索する。再生リストには十本ほどの動画がアップロードされており、どれも再生回数は万単位だった。

試しに適当なものをタップする。名前とは対照的に、画面の向こうから語りかけてくる彼女の声は軽快そのものだった。学生時代の彼女と重ねたが、すぐにそれが思い違いだと気がついた。

決定的に違ったのは、どれだけ弾けるように笑っていても、そこに眩しさはなかったこと。顔が見えないからとか、そういう問題じゃない。

夜勤明けの眠気が襲って来たから、すぐに動画を消して敷きっぱなしの布団の上に身体を預ける。

目が覚めると、すでに日が暮れかけていた。直前の記憶が綺麗に抜けていた様子から、どうやら久しぶりに深い眠りに落ちていたようだ。

このまま夜勤が始まるまでダラダラとテレビを見て時間を潰す。

夜勤の週は、身体の動きや思考そのものが本来の七割ぐらいしか発揮できない。寝ても覚めても頭に霧がかったような、微睡(まどろ)んでいるような、ただ生きているだけのような。そんな感覚になる。

もっとも、今まで何か目標を持って生きてきた訳ではない。

だから今日、思い切って田中さんのところに訪れてよかったと思う。

彼女を利用して、自分の生活に張りを与えようとした。