研修2日目の職場見学が終わると、僕は特に深く考えず、夜勤がある生産ブロックを希望した。そして何事もなく、そこに配属されることになった。

そして田中さんは、総務ブロックに配属された。

総務ブロックは今回のような新入社員の研修はもちろん、取引先との交渉や工場見学者への案内など、生産以外の分野で幅広く対応する部署だ。

事務職であるため清潔な職場で働くことができるが、一度そこに配属されると、生産分野に関わることはなくなる。田中さんの夢だった海外勤務は、早々に道が閉ざされたと言っていい。

高卒で総務ブロックに配属されることは異例らしかったため、同期の人間は羨ましがったり(ねた)んだりと、様々な反応を見せた。

総務ブロックには田中さんのほかにもう1人選ばれていたが、その人の容姿が田中さんに負けず劣らずだったから、そういうことかと残念に思った。

僕は田中さんにどう声をかけて良いかわからなかったが、彼女は「早く仕事覚えて転属希望を出すから大丈夫」と、必死に自分を奮い立たせていた。